第2話

「最悪だ……」


なんの前触れもなく、俺は唐突に前世を思い出した。


転生モノと言われる小説にあるような頭痛も違和感もなく。スーパーで買い物をしていて忘れ物を思い出すような気軽さで、俺は前世を思い出した。


幸いと言うべきか、なぜか前世と今生も人格や魂は一緒らしく、前世の葉山海斗はやまかいとも現在のカイン・マグナリアも間違いなく俺だと認識出来た。


「このままじゃ……やべぇよ……」


それと同時に口から出たのは危機感だった。本当なら例によってオタク知識をそれなりに備えた俺は剣と魔法!王族!勝ち組チート!……とお付きのメイドから親に気が触れたとか報告が行きそうなほど狂喜乱舞しただろう。


……だが喜べない。断じて喜べない。生きた人生次第だとは思うけど、前世の記憶を保持してるのは幸運だろう。生まれた家庭もありがたい事に、奴隷とかスラム街どころか、王族。まさに強くてニューゲームだ。やったね!


王族特有の義務や責任、面倒はあっても謀叛や革命、戦争で負けない限りは基本的に不自由ない人生を送れるのだ。最高だ。


…………………………ここが乙女ゲームの世界で、どのルートでも俺が悉く非業の死を迎える悪役じゃなければ……。


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