第6話

 授業も全部終わり時刻は十六時半。

 夕飯を食べて帰るには少し早い時間だったので素直に帰宅。

 そいういえば、聞くことはないとかあの時は思ったけど普通に何時から始めるのかとか予定を聞けばよかったな……。

どれだけ高揚してたんだ俺……。

 今更聞くことも出来ずとりあえずはテレビを付ける。

 こんな時間のテレビなんて再放送のドラマか子供向けアニメくらいしかやってないけどそれはそれで暇つぶしになるだろう。

いや、地域の情報番組も悪くはないんだけどあのアナウンサーのおっさん変に暑苦しくて苦手なんだよな……。

ということでよく分からずポケモンを布団に寝転がりながら鑑賞。

こういう時って意外とオナニーすることも多いんだけど一応それは出来ないよな……とか自制心を働かせて我慢をする。

なんかそういうこと意識すると興奮してきたけど慣れないことで疲れてしまったのだろうか、抵抗するのも面倒くさい睡魔が襲ってきた。

仕方ない、目覚ましを六時にセットして、と。

その時間なら大丈夫でしょう。寝顔はすでに見られてるし特に気にしない気にしない。

そういえば鍵持ってるのかなー、とかそんなことが頭によぎったけどまあどうでもいいや……。


「家に帰ってきて寝ることしかやることないわけ?」

 朝と変わらず上下赤色のジャージ。それ高校かなんかのジャージだろ絶対。

「あー、鍵持ってたんだやっぱり」

寝起きの頭だとそんなことしか考えられないし言えないし。

「何がやっぱりなのよ。鍵くらい持ってないと朝だって入れてないでしょうが、この部屋に」

ごもっともですね。

「あんたの希望としたら今日は飲み会があるからやっぱり無理だわー、とかそういう返答が良かったのか?」

「まあ普通の大学生ならそういう風になってもいいわよね。だけど今日は大事な用があるから、って断ってくれないとあたしも切れるわよ。だいたいこんな事は手短に終わらせたいんだから」

「手短に、ね……こっちは事情が全然分からないからなるべく詳細な説明は欲しいのだけども」

 なるべく緊張してることを悟られないようにクールに声を低く興味なさそうに。

そうはいっても手遊びしてる自分がいるんだけど。

そして向こうは明らかに興味がない様子で

「別にどうもこうも詳しい事情なんてないわ。あんたが夢で見た内容そのまま。あたしはあんたの好みどおりにぽっとこの世に出てきました、以上」

 はてどうしたものか。ただただ頭を掻くしかない。

「はいそうですか、と簡単に言えるほどいろいろこじらせてはないつもりだけどな」

 彼女はため息を吐く。

「そうは言われても証明はできないわ。だからあたしは事情はそうだとしか言えない。それに考えてみなさいよ。あんたの周りに女子がこういうふうにいるってだけでどんな奇跡が起きてても不思議じゃないでしょ?」

「そこまで……だよな……うん……」

 まあそうだ。こいつが現実に知り合いで忘れていたというオチの方がありえないというか、それだと俺の頭はこんな夢を見ているより更におかしいことになるからな。だとすれば夢だろうと現実に起きた奇跡だろうとこの状況を信じるしかないのだ。

 よし、覚悟完了。

「で、俺はこれからどうすればいいとか何かあるのか?」

「そういうのを聞くのがまずどうかと思うのよね。ま、別にないわ。今まで通りの学生生活を送ってくれればいいのよ。あ、それと私はあんたに何か特別な感情持ってるわけじゃないから。そのあたりはあしからず」

 あまりに素っ気ない言い草に俺もため息をつく。そうだよな。

自分もこういう状況で期待という行為が出来たんだ、という驚きとその期待が外れた残念な気持ちと、そして自分の努力が何も絡んでないこういう出来事に期待する自分の厚かましさとおこがましさと、とにかく滅茶苦茶にいろんな感情がかき回されて混ぜられて、もう訳が分からない。

 それでもこんな台詞を言えた俺は立派だと思うのだ。

「こういうのって普通意味もなく俺のことを好きとかそういう設定じゃないのかよ!」

 情けない台詞ですけどね。

それでもこの状況で異性に自分の気持ちを正直に叫べたのはすごいと自画自賛したくなるのだ。

 だけどこれすごい恥ずかしいな。何を言ってるんだ俺は。すごいけどキモいっての。

あーもう辛い。

 そんな鬱々とした気持ちに気持よく浸ってた俺に彼女は優しい笑いを浮かべながら俺に話しかける。

「確かにそうかもしれないわね。でもそういうのじゃないの。でも別に嫌いってわけじゃないし知り合った経緯がおかしいだけで後は普通に接してくれればあたしだって知り合いの一人として接するから。そんな難しく考えなくていいんじゃないの?」

これは予想外の反応。

まあそれはそうか。俺の好みなんだから性格はキツくても悪いわけじゃないのか。なんか変な根拠にもとづいて推測をしてる気もするがそれは覚悟を決めてこの状況を信じると決めたわけだからな。

なら俺だって明るく振舞わなければなるまい。

「そういうことならこれからよろしく。まあいろいろ気にして変になることはあると思うけどせっかく知り合いになったんだからそれなりに上手くやれればいいですね」

 おおう、最後敬語になっちまった。

「そうね。こちらこそよろしく。それとそういう変に敬語が交じるのとか変だからやめること。分かった?」

 へいへい分かりましたよ。

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