第2話

 ある日夢を見た。

「君は幸せになりたくないかな?」

「はぁ……」

 ああ、これ夢だな、というのがその瞬間に分かる夢だった。

だいたい禿げ上がって白いひげを蓄えた如何にも仙人みたいなおっさんにそんなこと言われても、というかこういう夢に出てくるなら普通は美人の女の人じゃないのか。

「君は幸せになりたくないかな?」

「そうですね、してくれるのでしたらありがたくなりますけど」

 どうにもこうにも埒があかないからとりあえず気のない返事をしてみた。

幸せになりたくないかん、ってなりたくない人はいないでしょうが、あなた。

「君は今なにを一番求めているのかな?」

「はぁ、強いて言えば恋がしたいとかそういうのですかね」

 別にまじめに言ったわけじゃない。

 だいたい自分が恋愛というものに向いてないのは分かっていてる。

 ここまで生きてきて失恋すら、人を好きになったことすらなかったのが何よりの証拠だ。

「それは難しい要求だね」

 あー、そうっすか、そりゃそうか。

「それならとりあえず君の近くに君好みの女の子を一人配置してあげよう。後は君の好きなようにするんだ。結果は全く保証しないがね」

こういうので結果は保証しないとか言うのかよ、どれだけだよ俺の夢……。

 まあともかく、機会をくれるというのならやぶさかではないのでそこは一言。

「じゃあお願いします」

 うん、我ながら諦めていると言いつつ女々しい答えだな。

 ま、どうせ夢だしせっかくぽっと出た選択肢を無下にするのももったいないオバケが出るもんな、ふふ。

 心の中の下らないつぶやきにそこの仙人らしき何かが反応するはずもなくただ淡々と、だけど顔には笑みを浮かべながら言う。

「君の思い通りの結末になるといいね」

 そうですねえ、思い通りになるのが一番ですよ、ほんと。

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