第2話
ある日夢を見た。
「君は幸せになりたくないかな?」
「はぁ……」
ああ、これ夢だな、というのがその瞬間に分かる夢だった。
だいたい禿げ上がって白いひげを蓄えた如何にも仙人みたいなおっさんにそんなこと言われても、というかこういう夢に出てくるなら普通は美人の女の人じゃないのか。
「君は幸せになりたくないかな?」
「そうですね、してくれるのでしたらありがたくなりますけど」
どうにもこうにも埒があかないからとりあえず気のない返事をしてみた。
幸せになりたくないかん、ってなりたくない人はいないでしょうが、あなた。
「君は今なにを一番求めているのかな?」
「はぁ、強いて言えば恋がしたいとかそういうのですかね」
別にまじめに言ったわけじゃない。
だいたい自分が恋愛というものに向いてないのは分かっていてる。
ここまで生きてきて失恋すら、人を好きになったことすらなかったのが何よりの証拠だ。
「それは難しい要求だね」
あー、そうっすか、そりゃそうか。
「それならとりあえず君の近くに君好みの女の子を一人配置してあげよう。後は君の好きなようにするんだ。結果は全く保証しないがね」
こういうので結果は保証しないとか言うのかよ、どれだけだよ俺の夢……。
まあともかく、機会をくれるというのならやぶさかではないのでそこは一言。
「じゃあお願いします」
うん、我ながら諦めていると言いつつ女々しい答えだな。
ま、どうせ夢だしせっかくぽっと出た選択肢を無下にするのももったいないオバケが出るもんな、ふふ。
心の中の下らないつぶやきにそこの仙人らしき何かが反応するはずもなくただ淡々と、だけど顔には笑みを浮かべながら言う。
「君の思い通りの結末になるといいね」
そうですねえ、思い通りになるのが一番ですよ、ほんと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます