第14話 魔宝剣とは。そして妹とは
昨日は遅くまでトランプで遊んでて、カードをつかんだまま寝ていた。
ティオはポーカーフェイスが苦手らしく、感情がすぐに顔にでるタイプのようで、楽に勝てた……とはいかなかった。なぜなら俺も同じタイプだからだ。
故になかなか決着が着かず、ババ抜きなどは最初にジョーカーさんが振り分けられた時点で勝負が決まったようなものだった。スピードとかは盛り上がったけど。
まだ寝ているティオを起こし、一緒に朝食をとった後、今後の計画をたてた。
生誕祭のパレードがこの町に来るまではひたすら特訓。なんでもこの町の周辺には草原や森が多く、万一魔法の特訓中に失敗しても他人にケガをさせるということがないため特訓にもってこいの穴場なんだそうだ。
「じゃあ早速行きましょうか。魔宝剣もあることだし、まずは基礎の剣術から」
「おお! 剣術とか、もう名前からしてかっこいい」
「練習は地味だし体中痛くなるしキツいわよ~。まだ魔法の方がマシね」
「早く魔法の使い方覚えてがんがん使いたいなあ」
「それはまだ先。仮に強化魔法を使ったとしても戦闘技術がなかったらあまり意味はないし」
「それもそうか。しかし、貴重な剣が手に入って本当にラッキーだった」
俺は手元にある銀色の剣を眺めながらそう言った。
長すぎず短すぎず、絶妙な長さで、片手でも両手でも持てるくらいの柄。そして鍔には丸い宝石のようなものがうめこまれている。
「ラッキーってレベルじゃないわよ。おそらくソーマの一生分の運を使い切ったわね」
「そんなに!?」
「当たり前じゃない。貴重すぎて資料もろくにないくらいなんだから。私も実物を見るのはこれで2回目」
ティオもまじまじと宝玉部分を眺めている。透き通るような白銀で、ずっと見ていたくなっちゃうもんな、それ。
「ところで、なんでこれってそんなに貴重なんだ?」
「すさまじい切れ味もそうだけど、一番は魔力を通すことで固有魔法を使えるから。まあ今のソーマの魔力じゃ到底発動できそうにないけど」
「う、なら俺にとってはただの切れ味抜群の剣、ってことか。なんかもったいないなぁ、ティオが使った方がいいんじゃないか?」
「それはおそらく無理ね。だってもう剣がソーマを主として認めているもの」
「え、何それ怖い」
まるで生き物のような言い方だ。中にいるリーサのこと、じゃないよな、きっと。
「だって、手にした瞬間光ったでしょ? 昔読んだ本で、魔宝剣を手にし、発光現象が起こった場合にのみ固有魔法が使えるって書いてあったのよ。びっくりしたわ、巨木の裏側がピカーって光ったときは」
「そうだったのか……なんで俺なんかを選んでくれたんだろうな」
「さあ。選定基準までははっきりしてないみたい」
「やっぱりわからないことの方が多いか。いつか使えるようになりたいな、その固有魔法ってやつ」
「まあ難しいでしょうね。仮にソーマの契約竜が近くにいたとして魔力をフルに使えても、その竜が伝説級の竜じゃないと」
「どちらにせよ使える確率は低い、か」
「業物が手には入っただけでもありがたいわ。さ、話はこれくらいにして特訓に行くわよ!」
「唐突だな。でもまずこの剣云々より特訓か。おっしゃ! やったるで!」
俺もティオも威勢良く立ち上がり、森へ向かう。元気良すぎだろ俺たち。
そして場所が変わって今現在。
「も、もう無理だ、休ませてくれ」
「何言ってるのよ! 来る前までの威勢の良さはどうしたの!?」
だって2時間中、1分の休憩もなしで全力特訓ですよ。誰だって音をあげますよ、ええ。
「しかたないわねぇ。30分だけ休憩にしましょう。私はその間にメイルに乗ってお昼ご飯買ってくるから、出歩いて迷子にならないようにね」
「子どもじゃないんだからそれくらいわかってるって。じゃあまた後で」
「きっちり30分後に戻ってくるから。じゃあ行ってくるわねー」
「はーい」
ふう、やっと一息つけた。
それにしてもティオさんスパルタすぎた。打ち合いの中で極意を学べとかいつの時代だよ。いや、そういう時代かもしれないけども。
ケガしないように木剣を使っているが、俺の体はすでにアザだらけだ。これは休めるときにきちんと休んでおかないと死ぬな。
木剣じゃなく、木刀だったら……いや、これは考えても仕方のないことか。そもそもこっちの世界に刀」があるかすらもわからないし。
できるだけ体を動かさないために寝転がろうとした、瞬間。
「動かないで、ソーマ」
背後から聞こえる女性の声。
首に、短刀を押し当てられる。
あまりに突然すぎて声もでない。
え、なにこれ。もしかして今、殺されかけているのでしょうか。
その前に、なぜ俺の名前を知っているのでしょうか。
状況が把握できずパニックになりかけていたその時、背後の人物がまた話しかけてきた。
「さて、ここで問題。私はなぜこんなことをしているのでしょうか」
「俺を殺すためです」
「残念、不正解。正解はソーマがパニクるのを見て楽しむため」
???
だめだ、疑問符しか浮かばない。
でも、1つだけわかったことがある。
こいつは確実に知り合いだ。だって声に聞き覚えあるもん。混乱してとっさにでてこないけど。
「次の問題です。私は誰でしょう」
うわ、なんだこのストレートな質問。
でも、おかげで冷静になれた。
パニックって怖いな、こんな聞き慣れた声、忘れるはずもないのに。
「お前、音波おとはだろ」
「正解。もし間違ったら首をチクッてやっちゃうところだった」
短刀が離れたかと思うとすかさず背中に抱きつかれる。
背中に押し当てられるわずかな感触。間違いない、妹の音波だ。
「今失礼なこと考えたでしょコロス」
「相変わらず容赦がないな、我が妹よ」
「妹じゃない、幼なじみ。何度言えばわかるの」
キュッと首がしまる。これアカンやつや。
「いや、1コ下だし小さいときからずっと一緒だし家に入り浸ってるし妹と言っても過言では…」
「過言。妹じゃない。幼なじみ。とても大事なこと」
「ぐええ、わかったわかった、お前は幼なじみ! まぎれもなく幼なじみだ!」
「よし、離してあげる。本当は一生離したくないけど」
あ、危ない。首をキめられて気絶するところだった。
しかし、なぜ音波がこっちの世界にいるんだ!?
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