第13話
「数人、お弁当」
「だから別にいらないって言ってるんだけどな…まあいつも通りありがたくもらうんだけど。ありがとな」
あれから一ヶ月、美久は週に2度くらいなぜか昼に自分で作った弁当をくれるようになった。
美久曰く
「借りをちょっとずつ返したほうが楽かと思って。それに自分の分と一緒に作れば元手もあんまりかからないし。」
だそうだ。
大学内で会うのは恥ずかしいけど食費も浮くのでありがたくいただいている。
この弁当の件も含めて、あれからだいぶ美久とは打ち解けた気がする。
ずいぶん弱いところも見ちゃったしなぁ…
それでも未だに無言で足踏まれたりするけど。
弁当を食べていると美久がこちらをじっと見てくる。
「今日はどう?」
「ん?いつも通り美味いけど」
なぜか美久はいつも味を聞いてくる。
今回の弁当は唐揚げに卵焼きにひじきの煮物という非常にオーソドックスなもの。
まあ何であっても普通に美味しいんだけど。
美久はほっとした顔をするけど別にいつも美味いって言ってるんだから何を心配する必要があるんだろうか。
そう思いながら弁当を食べて、昼休みも終わりの時間が近付いてきたころ、携帯に一通のメールが来た。みずほさんからだ。
「今度の土曜日にこの前言ったお説教タイムだからな[ハート]」
絵文字が非対応で普通の文字になってる分怖さは減ってるけどそれでも怖すぎる。
美久が横からメールを見てくるが、美久は見た瞬間笑いながら
「ご愁傷様。頑張ってね。」
とか言ってくる始末だ。どこにも俺の味方はいないのか。
しかし一ヶ月してからとか随分遅くまで引き伸ばしたものだ。
その間にも何回かバイトもあってこっちはビクビクしてたのに。
ま、それを考えると逆にこれで気が楽になるのか。
怖いけど。やっぱり怖いけど。
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