第4話
さて仕事場。といっても本当に人通りのない路地裏なのだけれど。
ちなみに仕事場に行くまでの道での話のまとめとしては二人共大学2年生、全員違う大学でこのバイトは2人とも大学に入ってから、ということだった。
まあ基本的に僕は質問されたことに答えるだけだったのだけれどそこまで気まずくならなかったのは3人いるというのとこの2人が本当に良い人たちだったからだと思う。本当に。
「さて、お仕事だな。まずはちょっと数人の能力試してみるか!」
「いきなりぶっつけ本番になっちゃいますね…」
僕が心配そうにそう言うと小坂さんは一応聞いておこうか、くらいの軽い口調でこう尋ねる。
「本当に繋げられるの?半径2m以内から離れたら能力使えなくなっちゃうのが普通なのに?」
僕は目を閉じて念じる。二人の右腕の手首がそれぞれ僕の右腕と左腕の手首と一本の糸で繋がれるのをイメージする。
するとその糸をつたってよくわからない白いもやもやしたもの(その時僕はこれを魔力と思っていた)が通っているのを感じる。
そしてなんだかよく分からない感情が自分の中を通り抜けていく。
うん、だいたいは研修の時と同じだ。
「はい、これで大丈夫なはずです」
僕はもう一度2人の間を流れる何かを確認しながら言う。
「で、目標はあれだな…最初はいつも通りにやった方がいいな。よっしやってみるか!小坂!頼んだ!」
「はいはい…そんな大きな声出さなくてもやるから大丈夫!」
高橋さんが前方に見える悪魔に視線を合わせて右手を上げてから勢い良く振り下ろす。
まるで重力が何倍かにもなったような勢いで地面に叩きつけられる悪魔。
悪魔退治を初めて見る僕には衝撃的な光景だった。
「お、数人見るの初めてだもんな!よし飛ばして行くぜ、小坂!」
「だーかーらー分かってるっての!行くよ!」
二人の間を流れる魔力が多くなっていくのが分かる。
悪魔はそれに伴ってどんどんと小さくなっていく。
「さて、ちょっと離れても大丈夫か試してみるか!小坂!離れてみてくれ!」
そう言われて小坂さんは一歩ずつ下がっていく。
「うわ…本当に大丈夫なんだ…」
話には聞いていても5mほど離れても能力を使えていることが二人共驚きらしく、二人共笑い出した。
「すごいなこれ!よっしもっと飛ばしてくぜ!」
「本当なんだ…気分いいからちょっと頑張ろうかなっ」
二人の間を流れる魔力が光っているように見え始め、圧倒的な力が僕の中を通り過ぎる感覚が僕の体を震えさせた。
気付くと悪魔の姿はもうなくなっていて僕に駆け寄ってくる二人の姿が見えた。
「すっげーな数人!最高だよこれ!」
高橋さんが僕の肩をバンバン叩きながら相変わらずの大きな声で言う。
「進藤くんすごいじゃんこれ!離れててもいいっていろいろ戦略広がるもん!」
小坂さんも興奮気味に話す。
その二人の姿を見ながら僕は初めての仕事が終わったという安堵感と、自分が役に立ったんだという満足感が心を満たしたのを自覚した。
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