第2話
人生の分かれ道、なんてものはどうやっても後付けで、しかもささいなことから始まってるんだと思う。
大学生になり憧れの一人暮らしを初めて一ヶ月くらい経ったころ、それなりに知り合いも増え、そろそろ周りがバイトでも…と騒ぎ始めていたのでこれは自分もなにかしなきゃいけないかな、と思っていた時のことだった。
「悪魔退治のバイトしませんか?」
スーツを着たきれいなお姉さんにそう呼び止められた。
別に珍しい話でも何でもない。
高校の時だってクラスに1人はやっているやつがいたし、呼びかけられるのも珍しくはない。
ただ一応交通事故にあって死ぬくらいの確率で事故があることとか意外と拘束時間が長い、とかそんな理由で声をかけられても断るやつも多いバイトだった。
その時の僕はちょうどバイトを探していた時でもあったし、なによりこう、格好良いかもな、と思ってしまったのだ。
まあそんなこんなでほいほいとそのお姉さんについていった僕はその日のうちに検査と称した能力判定(あれが能力判定だと知ったのはだいぶ後のことだ)を受けた。
で、言われた結果は
「これはすごい珍しい能力ですね、名付けるならコードでしょうか」
「コード?」
「はい、線という意味でのコードです。あなたには能力者と供給者を繋げる力がある」
悪魔退治の力を持つ人には大きく分けて2種類いる。能力者と供給者だ。
能力者にはエネルギー(魔力とでも呼んでおこう)を注げばそれを使って悪魔を殺せる力を使うことが出来る。
しかし能力者にはその魔力が備わっていない。
逆に供給者は魔力を持っているがそれを使う術がない。
ではどうするのか、というと魔力はごく近距離においてのみ分け与えることが出来る。
魔力の減衰と距離の関係については量子論が…とかいろんな説があるが少なくとも僕には1つも分からない。
とにかく力を使うには能力者と供給者が2人セットで、しかもごく近距離にいなければ行えないという成約があるのだ。
そしてどうやら僕の能力は「ごく近距離で」というのを克服して能力者と供給者がお互いに離れていても魔力を供給できるようにする、というものらしかった。
「いやぁ、運用の仕方がガラっと変わりますよ、あなたの能力があれば」
そう言われて悪い気がしなかったのは事実だ。
少なくとも僕はその時、必要とされていると感じていたから。
その日はそこで終わり。次の日に研修、ということで自分の能力を使ってみたり、といったことがあり、それから1週間、僕のもとに初仕事の日程を知らせるメールが来た。
5月22日、土曜日の夜、それが僕のどうしようもない苦しみの始まりだったのだ。
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