普通な僕の普通な一年

@asetonn

第1話

「結局のところさ、お前があいつらを恨んでた理由ってのは自分を選ばなかったからじゃなくて自分をあの中で少数派にした、ただそのことだけだったんだよ」

 駅前の通りに面したいわゆるおしゃれな(僕にはその程度のことしか分からない)喫茶店でケーキを頬張りながら僕の上司はにやにやと笑いながら僕に言う。

 毎度のことに段々と腹を立てることすら面倒くさくなってきてはいたが、こんなやり取りは儀式みたいなものだ、と自分に言い聞かせながら僕は彼女にこう返す。

 「いつも言ってますがね、あの時僕は本当にあの2人を祝福してましたし、ああやっぱり自分じゃないよなってきちんと納得してたんですよ。恨むなんて感情はこれっぽちもなかった」

 僕のこの答えにやっぱり彼女はいつも通りどうでもよさげに

 「ま、お前の面倒なところはそういうところだから別にいいんだけどね。それにお前の一番おかしいところは自分のことしか考えてないってところもあるけど、あの状態で仲が良かった、とか平気で本気で言うような普通の基準が明らかに世間一般とずれてるところだしね。まあいいか。で、どっちを選ぶか、答えは出したのか?」

 「答えも何も僕はというか向こうだってそんな風には思ってないですって何度も言ってます」

 選ばない、そういうわけじゃない。いつだって自分には選択肢なんてないと思っている。それでも…そう言おうとしたがそれは言葉にすることが出来なかった。

 「ふふ、ゆっくり悩めばいいさ。そして本当に何も選べなくなった後悔と絶望の顔を見

るのも悪くはないしね」

 そう、答えられなかった。僕が自分で嘘をついていることは自分でもなんとなく、本当になんとなくわかっていたから。

 「さて仕事の話に戻ろうか数人。お前がいなくても出来る仕事の話にね」

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