第4話 三月上旬:告白Ⅰ

 学校の昼休みに、優は友達とお弁当を食べながらお喋りしていた。

「なんだってー?!」

 ジャズ部に入っている友達が叫んだ。


「あのお姉さまに告白するだとー!」

「ちょっと、声が大きいよ」

 優は慌てて友達の口に手を伸ばして塞ぐ。


「優」

 クラスの友達が優の肩に手を置く。

「お前ってやつは…… 無茶しやがる……」

「これは死亡フラグだな」

「この戦争が終わったら、俺あの子に結婚を申し込むんだ、と言って戦死しちゃう奴だな。ああ、切ない。胸が締めつけられる。優よ、俺達はお前の勇気を忘れないぞ」

「いや、やらずに後悔するより、やって後悔する方がいい、と漫画の主人公がよく言ってる。このほろ苦い経験は優を一回り大きな男に成長させてくれるさ」

「どっちにしろ後悔すること決定かよ」

 一緒にお昼を食べている友達達は好き勝手なこと言って盛り上がる。


「あの、なんでみんな失敗することを想定するんだよ」

 友達たちが食事の手を止め、唖然とした表情で優を見る。

「お前…… 正気か」

「中世ヨーロッパでは身分格差というものがあってだな身分違いの恋に若者は苦しんだと言う。それが現代日本では顔面偏差値格差となって残っているのだよ」

「まあ待てお前ら」

 好き勝手言っている友達を制したのは、ジャズ部の友達だった。


「そりゃあ、優は超絶イケメンてわけじゃないけど、上中下の中には入る。背伸びしてジャンプして手を伸ばせばあのお姉さまの足元には届くはずだ」

「ダンクか?」

 友達の一人がちゃちゃを入れる。


「俺が言いたいのは、可能性は0じゃないてことだ。そして、俺達がやることは優を応援することだろ」

「おお!! 良いこと言うな。そうだ、みんなで優を応援しよう」

「そうときまったら、作戦会議だな。どう告白すればいんだろうな」

「良い雰囲気に持って行って、告白の言葉は、つき合って下さい、の直球勝負じゃないか」

「つき合って下さいだけじゃ弱くないか。相手のことが好きだというのを強調して、だからつき合って欲しい、て流れになるんじゃないかな」

「つき合ったら絶対に大事にするとか、一生愛し続けるとか、そう言う言葉も必要じゃね」

「良い雰囲気に持って行くには場所が大事だよ。ロマンティックな場所が良いよな」

 友達の話を聞きながら優はあることを思い出していた。


「そう言えば、前にディズニーランドに行ったとき、思い入れのある場所があるって言ってた。そこで告白するのはどうかな」

「それだ! ランドは告白のメッカだし、思い入れがあるなら、これはもう、間違いない!」

「決定。ランドで告白」

 友達達の声が重なる。優もそれが良いと思った。


(告白するまでの当日の行動を考えなくちゃ。そうだ服もお洒落なのにしなくちゃ)

「みんな、ありがとう。僕、やるよ」

 優は拳をギュッと握りしめる。


「そうだその意気だ、優」

 何だかんだ言っても応援してくれる友達が頼もしく思えた。

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