第3話「まあ、お茶でも飲んで」

「あ、あの。何故わたし達の名前を知ってるんですか?」

 姉の方、ミカが聞いてきた。


 やはりそうなのか。

 この二人は僕が書いた小説の登場人物「ミカ」「ユカ」なのか?


「……もしかしてあなたはこの世界の守護神様ですか? だったらわたし達の事がわかっても不思議ではないですけど」

 今度は妹の方、ユカが言った。


「違うよ、僕はただの人間だよ」

 てか、この現実世界に守護神なんているのか?

 仮にいたとしてもどこにいるのか。


「じゃあ何故?」

 ユカは首を傾げた。


「ん~、信じてもらえるかどうか……まあ、とりあえず」

 僕は部屋の奥にある押入れの襖を開けてそこから座布団を二枚出して、その部屋に置いてあったコタツの側に敷いた。


「二人共そこに座ってて。今お茶持ってくるから」

 そう言ってから僕は台所へ向かった。


「さ、どうぞ」

 僕は紅茶と買い置きしてたお菓子を彼女達の前に置いた。

「あ、どうも」

「ありがとうございます」

 礼儀正しくお辞儀する彼女達だった。


 そして僕は彼女達の向かい側に座った。


「さて、まず君達はどうやってここに来たの?」

「わたし達は自宅から連合国の盟主国へ転移魔法で転移するつもりだったんです。でも何故かここに来てしまって」

 ミカが俯きながら言った。


 なるほど。連合国という設定はまだどこにも出してない。

 僕の頭の中にしか存在しない。

 やっぱ間違いないのか?


「あの、何故あなたはわたし達の事を?」

 ユカが少し警戒しながら聞いてきた。


「ん~えっとね、君達はね、僕が書いてる小説の登場人物なんだよ」


 二人共沈黙していた。


「あ、ごめん。言い方が悪かったね。僕が書いてる小説の登場人物と君達の名前が同じで、イメージしていた外見とそっくりなんだよ。だからつい」

 今はそういう事にしとくか。


「……あの」

 ミカがおずおずと手を上げた。


「何? ミカちゃん、でいいよね?」

 呼び捨てじゃ悪いからちゃん付けにしとこ。


「はい。あの、その小説見せてもらえませんか?」

「ん? いいよ。ちょっと待ってね」

 僕は隣の部屋からいつも使っているノートパソコンを持ってきた。

 そしてそれを台の上に置いて小説投稿サイトのページを開いた。

 ブログとこのサイトの両方にあげているが、サイトの方が見やすいかな?


「はい、これだよ」

「……これって魔法の鏡じゃないわ。何?」

 ユカは画面を覗きこんでいた。


「これはパソコンっていってね、これでいろいろな情報を公開したり検索したりできるんだよ。そっちにも似たようなのあるんじゃないの?」


「もしかして秘術・検索円陣みたいなもの?」

 ユカは首を傾げ、記憶を辿るように呟いた。


「たぶんそれと同じだよ」

 その設定、本編には書いてないけどあるんだよね。

 伝説の秘術で誰でも使えるわけじゃないけど。




 その後しばらく彼女達は、サイトにある小説を読んでいた。

 向こうの世界の言葉は発音が日本語と同じだけど、文字の形が違う設定になっている。

 漢字やひらがなカタカナは向こうの「古代文字」という設定だけど、その通りなのかもね。

 彼女達は古代文字が読める、という公開していない設定もあるし。

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