二章 記憶
「えぇ、はい、なので今日は休ませてもらいます」
母は学校に俺が急に熱がでて休んだと電話で言った。そして電話を戻して俺の方に向き返し……
「しかし……ほんとにあんたは和馬なの?」
「あぁ、そうだよ。いい加減信じてくれよ」
「しかしねぇ、でもまぁ今学校には熱がでたといったわ。だから今日は休みなさい」
「……うん」
自分も何がどうなってるのかさっぱりわからない。なぜ夢の中の出来事が現実で起こりうるんだ。だが悩んでも仕方がない。もう事実を受け止めるしかないんだ。なぜなら……
◻◻◻◻一時間前◻◻◻◻
「えぇぇぇぇぇぇーーー!!!なんで?! 何で俺……女の子になってるの?!?!」
鏡を見つめながら俺はそう嘆く。男の凛々しい顔立ちが、可愛い美少女になってるではないか!でも内心ちょっとうれしい。せめて可愛くて良かったと和馬は思った。
「あなた……だれ?和馬のお友だち?」
「チゲーよ。俺だよ和馬だよ!」
「か、和馬!?」
そして俺は夢で女の子になったことなど、知ってる限りを全て母に話した。
「そんな……漫画みたいなことが……」
そして母は驚くべきことを口にした。
「でも、女の子ままでいいんじゃない?」
「はぁ?!ふっざけんな💢女になってたまるか!」
「ほらぁ、女の子がそんなことを口にしてはいけません」
まったく親という生き物は時々息子を平気で裏切る。こんなときにのんきなことを言う親にあきれるものである。
いや、まてよ?俺はもう男ではない。俺はもう女なんだ。てことは……
急いで二階の自分の部屋に潜り込む。後で親が何か言ってるが今はそんなことを気にしている場合ではない。そしてドアを閉め、鍵をかける。そして上着を脱ぐ。
「やっぱり……」
和馬はそう呟いた。その理由は……
そう、今和馬の胸にはブラジャーがついていたのだ。そしてゆっくりそれを脱がす。ゆっくりゆっくりずらしていく。鼓動が早くなる。心臓が暴れているようだ。そして……
ブラジャーの下から綺麗なピンキーカラーのふっくらと盛り上がった胸が顔を出した。
「うわっ!やべぇ、生モンだ、!」
そしてゆっくり手を近づけ触ろうとしたとき…
「入るわよ」
ドアのほうからそんな声が聞こえて後ろを振り向くと、なんと母親がっつり見てるでわないか。 しばらく沈黙に包まれる。その間も母親は裸の俺を見続ける。
「お、オワタ(*^▽^*)」
心の中で俺はそう思った。そして耐え切れずに俺は声を上げる。
「いやあああああああああああああああああああああああ!!」
と、叫びながら布団に飛び込みくるまり、裸の姿を隠す。
「あんた……何やってんの?」
「お願い!許して!僕の罪を公表しないで!児童ポルノ処罰法第2条においてわたし捕まってしまうずら!」
涙目になりながらそう言う。焦り過ぎて後半が地方の方言になってしまった。しかも親の前で児童ポルノとか言っちゃった。そっちのほうがなかなかやばいよね。でもエロゲーは親公認だし、平気だと思うんだけど………いやでも犯罪と趣味は違うし、あ~~も~~………
母親がどんな反応をするか怯えていたが、そんなことを気にする様子はなくいつもどうりの口調で口を開く。
「許して?捕まる?何のこと?よくわからないけどとにかく一階に降りてきてこれからどうするか話しましょ」
「う、うん」
よかった。母さんが鈍感で…
◻◻◻◻◻◻◻◻
和馬はリビングに戻り、ソファーに座る。すると母は、
「あんた、男に戻る方法を探しているんでしょ?」
「あ~、もういいや。このままで」
「なに?男に戻ることは諦めたのね。ま、いいんじゃない?私も娘ができたみたいで嬉しいし」
「あ、そうなの?」
「なら丁度良かった。あんた女の子として生きるのなら口調も女の子に変えてくれない?」
「いや、そんなことまでする必要はないだろ…」
最初は馬鹿馬鹿しいと思った。だか考えていく内にまんざらでもないような気持ちになっていった。もし、いやもし本当にこの姿が継続されていくならば、俺は私として、和馬は女子として生きていかなくてはならない。そう考えると女子として生きてくことを呑み込まなくてはならない。だから…
「じゃあ、まぁ男に戻るまでなら…」
「ほんと?!じゃ試しに何か喋ってみて!」
「え?!」
急に言われると困る。ひとまず女子っぽいことを口にしてみる。
「私甘いものだ~い好き♥」
やらかした。完全に引かれた。
「うん、結構かわいいわよ」
そうだ。俺(私)は今女子なのだ。声も女子で見た目も女子なのだ。だから周りからの視線は平気なのだ。だが、
「んー違和感あるな~」
ーーーーーー
父親にも状況を話し、とにかく学校にも最初は信じてもらえなかったが、なんとか状況を把握してもらい学校も明日登校するまでにはたどりついた。だが、勿論不安だらけである。男として生きてきたやつがいきなり女子として来たら一体やつらは何と思うだろうか。すんなり受け止めてもらいまたいつものように接してもらえるのか、または男子からは引かれるのか。最悪はいじめの対象となるか。考えただけでも恐ろしい。とにかく無事に明日がきてくれることを願う。
時計の針が12時のところで重なる。
「とにかくもう寝るか」
考えるだけでは何も変わらない。とにかく明日のそのときになったら考えようと思った。夜空には北極星が輝いている。その星たちがまるで俺を嘲笑うように光っている。俺は何でこんなことを考えている。俺は不幸なだけなのか。誰かを踏み台にして今日も強者は上へ上がる。そんな理不尽な世界で俺は何をしてる。そう考え、和馬はゆっくり目を閉じた。
ーーーーーーー
「きゃ~~~。とっても似合ってる、そのスカート。ね、和馬?」
やはり理不尽だ、この世界は。なぜ、なぜだ!なぜ俺は……………………………スカートを穿いているんだ!くっそ、まさか家にスカートとブレザーとリボンのセットがあったとは。スカートには赤い線と灰色の線が横向きにかいてある。ブレザーもしっかり紺色でリボンもしっかりと。全部俺の学校指定の女子の制服があるとは。どうやらあれから学校が問題が解決されるまではこの服を着なさいとすぐ送られてきたらしい。ご丁寧に校章も新しいのが用意されていた。
「学校には転校生が来た設定にしてくれって頼んどいたから」
「転校生ね~」
転校生と口にしてみる。いつもは転校生を迎える方なのに、いざ自分が転校生として学校へ行くとなると緊張する。
「あと和馬という人間は転校したということにしてもらったわ」
「器用だな」
すべての準備が整った。とにかく心を軽くしていこうと思った。玄関まで見送りに来る母に笑顔で言う。
「じゃ、母さん行ってくるぜ!」
「こら、女の子の口調」
「はいはい」
そう促され訂正する。
「行ってきます。ママ!」
ーーーーーーー
校内では早速転校生の話題でもちきりである。だが、俺は堂々と廊下を歩く。その行く先々で あの子誰? モデル? てか、結構可愛くない? などの噂がたってる。トイレを通りすぎる時にあった鏡に顔を写す。確かに可愛い。学校では珍しい茶髪にセミロングヘアー。発達した胸にピンク色の頬。細い足に細いウエスト。何もかもが完璧と言えるような少女になってる。本当にこんな娘に俺なんかがなっていいのか。そう考えてる内に先生に呼ばれた。
「おーぅい。君が転入生の結城か」
「あ、はい!」
結城という名字は変わってないのか。
「君には1年7組に入ってもらう」
なんと、前回と同じクラスではないか。これは偶然。てことは圭吾いるのか。あいつからどんな反応をされるのかちょっと楽しみだった。こんな美少女を前にしてあいつは なんて言うのだろうか。
担任の先生についていき1年7組の教室の前まで行く。
「じゃ、少しここで待ってなさい。少ししたら呼ぶのでその時に入りなさい。」
小さくうなずく。担任の教師がクラスのなかに入っていく。ドアが閉まる。ここに来て緊張が高まってきた。心臓の鼓動が高まっている。
「落ち着け落ち着け。ここはもともと俺もいた教室だったんだ。何も考えることはない。何も…」
その時…
「えー、では入りなさい」
「きた!」
緊張がピークまで達する。ドアの引き戸に手をかけゆっくりあける。クラスのやつらからの視線が怖かったがそんなことはなかった。逆にその反対であった。周りからは うわ、可愛いっ や、 誰?あの女の子。めっちゃ美人ジャン などの言葉が聞こえてくる。それとは裏腹に教卓の前まで歩く。その距離はたった2,3メートルだか、以上に遠く感じる今までこれほどの緊張で歩いたことはあるのか、というほど一歩一歩しっかりと踏みしめて、ようやく教卓の前に立ち皆の方を向く。
「えーでは、まず名前を言ってもらおうか」
な、名前だと?! くそ、名前は考えてなかった。何か、何かいい名前はあるか。このクラスにいない覚えやすくて馴染みのある名前はないのか。
「ん?どうした。名前を言うんだ」
担任からせかされる。くそ、なにかなにかないのか!思考を全力で巡らせる。その時…和馬の脳裏にある記憶が浮かび上がる。それはある女の人に本を読んでもらってる記憶だ。その読んでる女の人は、誰だ?母さんじゃない。俺が3歳ぐらいの時の記憶だ。誰だ?そしてその読んでる本のタイトルが…
「青い鳥」である。俺はこの童話が大好きだった。一匹の鳥の悲しい物語である。それを何回も読んでもらった。だが誰に?母さんにも読んでもらったが他の人にも読んでもらってる。そこにいる女性は…一体だれだ
「おい、結城。どうした。早く言いなさい」
だか今はそんなことはどうでもいい。名前を決めなきゃ。青い鳥か、そこになにかないか。青い、青い、あおい……そうだ!
「葵。結城 葵です。これからどうぞよろしくお願いします。」
そこから俺は和馬ではなく結城 葵として生きてくことにした。
蒼い太陽 ハルシオン @yukakun
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