一章 星に願いを
「あー女子になりてー」
いきなりそんなことを言うのは古城戸高校の一年生の結城和馬である。和馬はひとりっ子の家族でどっぷりの二次元オタクである。周りからは最初は『キモオタ』と呼ばれ、次はオタを取られ『キモ』になり、今では『キ』も取られ『モ』である。あだ名が『モ』と決まったとき凄い悲しかった。流石に一文字になるとは思わなかったからである。いやでも自分は本当にキ…
「おいモ! お前女子になりたいとか正気か?! そしたらお前のスティックのりが無くなるぞ」
ほら本当に『モ』と言われるでしょ?まったく、ひどいものだよ。
「別にいいよ。そしたら俺は女として堂々と生きるから」
「お前ってやつは…」
そう言ってため息をつくのはクラスメイトで親友の長野圭吾だ。彼は美人の姉が二人いる近親相……おっと口がすべった。美人の姉が二人いるまったく羨ましすぎる家系だよ。だが彼は俺のオタクの性格とは全く逆の性格である。しかも何人の女子とも付き合ってたいわゆる女たらしだ。
「だって女になったらオナ…」
「わーーー!!言うな!え、ここで言う?! 公共の場でそのNGワード言う?!」
突然圭吾は叫ぶ。
「え?だめなの?」
「『だめなの?』じゃねぇよ! だめだろ!」
そしてようやく理解する。いわゆる圭吾は俺がオナニーと言おうとしたから止めたのだと。
「別にいいじゃん。オナニーくらい」
「だから言うなーー!」
「うるせぇやつだな」
つまり圭吾は俺らがこんなエロトークをしてるのがクラスの女子にばれたくないんだ。自分がこんな人間だと思われたくないために。
だが俺はこんなクソ野郎が一番嫌いだ。きっとこいつはしてないと言うが絶対オナニーをしてると思う。クラスの女子に嫌われたくないからって自分を隠すのはただのクソだ。しかもこいつは積極的に女子と絡もうとしてる。そのときの笑顔の奴の顔がこの世で一番嫌いだ。俺はお前みたいな女子大好き男は大嫌いなんだよ。
「おい、どうしたら?いきなり冷めて」
「いつか………………お前を潰してやる」
誰にも聞こえないような声音で俺は喋った。
「ん?なんだって?」
「何でもない」
そう言い捨て俺は教室を出ていった。
◻◻◻◻◻◻◻◻
部活が終わり、やっと帰れるようになった。今日も拷問か、と思うようなメニューをやりとげた。俺はテニス部に入ってるため、毎日トラックを走らされる。そのあとに飲むアクエリアスは格別に美味しく感じる。
「今日はあのアニメを見るから早く帰らなきゃ」
そう思い俺は駆け足で家に帰る。その途中で女たらしという言葉がこの世で一番似合うと思う男、圭吾が期待を裏切らないというようにある女子と二人でいちゃついて帰ってた。見つからないように逃げようとしたが…
「おーーい。和馬ー」
バレちゃった🎵
「お、おぅ、圭吾。どうしたその人?新しい彼女か?」
「まぁね」
爆発しろ
「へ、へぇ。似合うよ、二人とも」
「「ありがとう」」
その女子とハモる。
「お、ハモった。いいことありそうだな?」
「うん!でも今は圭吾くんといるだけで幸せだよ!」
「こいつゥゥーー♥」
オぇェェーーーーー。吐きそう。爆発しろ。今すぐ別れろ。
「あ、わりぃな。じゃあな、和馬」
そう言い二人は夕焼けの沈む方向に消えていった。そして俺は即座に向きを家に変えて、全力疾走。家につき、自分の部屋に潜り込む。パソコンの電源をつけ、ヘッドフォンと携帯を装備して椅子に座る。
「俺にだって彼女くらいいるんだよぉぉーーーーーーーーーーーー!!!」
そう叫びマウスをクリックする。すると画面に『ラブラブガールズβ版』と写ってる。いわゆるエロゲーだ。そのゲームでマイページというところをひらくと右上に『彼女・・268人……ランクSSS』とかかれてる。このスコアはこのゲーム界ではプロ級である。だかここでのプロの意味はたらし度という意味になる。そして『彼女BOX』というところを開くとお気に入りのキャラクターをクリックして、拡大する。この娘が和馬の理想の彼女である。
「あーーー!可愛いーーー♥画面の中に行きターイ」
これが「モ」と言われる最大の原因だとは和馬は知らない。
「いいよねー二次元は。限界が無くて。三次元の女の子なんかもう要らねーよ」
するとそのときの急に睡魔に襲われたため、椅子から立ちあがりベッドにダイブした。
そしてふと思ったことを口にする。
「あーあ。女子はいいなー。男子を選ばなくて。一度でいいから女の子になってみたいな」そして和馬はそのまま眠りについた。
目の奥でなにかが光る。とても眩しい。そのせいで目が覚める。だか周りは見たこともないような場所だった。
「ここは、どこだ?」
試しに耳を引っ張ってみる。痛くなかった。痛いどころか餅のように俺の耳はのびていった。
「わぁァァァァァァァァァーーーーーー!!!」
そう、これは夢である。360度地平線が見ることのできるなにもない場所に俺は一人いた。
「なんだー夢かー」
そんなことを言いながら頭をかきむしると違和感に気づいた。もう一回かきむしる。
「こ、これは!」
なんと、俺の髪が肩ぐらいまでのびていたのだ。そして今度は手を見る。足を見る。あらゆるところを見る。そして和馬は気づいた。
「やった🙌!!俺女子になってる!!」
そう歓喜した。なんと和馬は夢の中で夢を実現させたのである。そしてその喜びの声も女の子の声になっていた。
「やったぞ!!夢の中だけど女の子になれた!」
数分間はずっと喜んでいたが、しばらくして……
「でも、目が覚めたら男になってるんだよね」
ふと思い返す。そう、ここはあくまでも夢の中なのである。女の子の時間はいまだけである。本当はもっと色々やってみたかったが周りには何もなく、しかも一人なためそのまま何もせずに寝てしまった。だか和馬は夢の中だけでも女の子になれて良かったと思った。
しかし……
目が覚める。時計は8時を指している。学校に行く時間である。急いで一階のリビングに行く。そこには母と会社に行く直前の父がいた。
「ほら、あんたも支度しなさい!」
母は自分を見ずにそう言う。そして朝ごはんを食べずに寒いのでトレーナーを着るためにクローゼットに行く。そして戻ってリビングに戻ったとき……
「あれ?!あなた……だれ?」
母がそう言う。
「は?何言ってんだよ母さん、俺だよ和馬だよ」
とうとう目の視力が0になったか、と思ったが母は意外な言葉を発する。
「何で、うちの家に女の子がいるの?!」
「え?」
耳を疑った。俺が…女の子?! そんなバカな。俺が女に見えるなんて……
いやまて心当たりがあるぞ。嫌な予感がして、急いで洗面所に行く。そしてそこにある鏡を見る。
「う、嘘だろ?」
だが、そこにいるのはキモオタの和馬ではなく俺がゲームの中でお気に入りにしていた とても可愛らしい女の子がそこにはいたのである。
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