第7話 清く正しく美しく(笑)

 現場事務所で雑談をしていたとき、所長に聞かれました。

「今、なんかの新人賞に出してんの?」

 小説書いてることがばれる前は、ひた隠しにしていましたが、今さら隠してもしょうがありません。

「ええ、じつは出してます」

「どこに?」

「角川に」

 カクヨムではありません。このとき、私は角川の某新人賞に応募していました。

「角川? マジで?」

 どうやら、私はメジャーなところへは出さず、聞いたこともないような新人賞を狙っているに違いないと、決めつけていたようです。

 案の定、こうおっしゃりました。

「もっと楽なところ狙えよ」

 といっても、今まで出したところと言えば、他には講談社、集英社、小学館……。

 言えばきっとこう一括されそうです。


「見栄張るな!」


 そのとき、一緒にいた元請けの新人君が言いました。

「WEB投票とかで決まる奴なら、手ぇ貸しますよ」

 なかなかよい心がけではないですか。

 もっともそのときは気にもとめてませんでしたが……。


 あるいは、私が小説を電子書籍で売ってることを知った職人さんが、言いました。

「教えてくれたら、買いますから」

 けなげです。刺青しょってますけど……。


 いざカクヨムのコンテストに参加するとき、こういったことが頭の片隅によぎりました。

 あいつら使えば、勝てるんじゃね?


 そうです。小説書いてることを隠してるときは、決して使えなかった技。

 開き直れば、会社の同僚、下請けの職人数十人を動員することだって可能なのです。


 ダークサイドへの誘惑。


 さいわい、私にもいちおうのプライドと良心というものがありましたので、闇落ちせずにすみました。

 結果的には正解です。

 なにせ、カクヨムでは読まずに入れた星は無効になるだけでなく、悪質と思われれば追放されるかもしれないとわかったからです。

 そうなったら、2ちゃんねるあたりで「南野ってやつは複アカだ。インチキだ。アホだ。馬鹿だ」と叩かれていたに違いありません(恐ろしや)。


 もっともそのシステムを知ったからといってどうなるのでしょう?

 職人たちにこう指導するのですか?


「いいですか? まず読まずに星を投入してもカウントされません。だから、まず全ページを開いてください。そのさい、あまり早く閉じると、読んでないと思われるかもしれないので、時間をおいてから……」

「はあっ?」

「いや、だからね。読んでるふりをしてください。それから星を入れるんです。みっつほど」

「めんどくせえ」

「そんなこといわずに。それも1作ではなく、全作お願いしますよ。ぜんぶで10作ほどありますけどね」

「なめてんのか!」


 無理だ。やっぱり無理だ(笑)。



 まあ、それは冗談として、やっぱりフェアプレーがいいよね。

 というわけで、実力勝負でゴー!

(でも宣伝だけはさせてくれ。南野、このエッセイの他に、コンテスト参加の小説ものっけてるからっ!)

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