第5話 夢の印税生活ですってぇえ!

 私の作品が電子書籍化されたことは、前にお話ししたとおりですが、それによって、雀の涙とはいえ、印税が入ってきております。

 会社の人間にとっては、印税が入ってくる人間というのが非常に珍しいらしいです。


 現場が終わって、会社に上がっていた時期、普段顔を合わせない分、いろいろちょっかいを出してくる人がいます。


 総務部長です。


 彼は私のことをシンディーと呼んでいました。

 なぜなら下の名前がそれににた響きのものだから。エヴァンゲリオンの「逃げちゃだめだ」の人と同じです。


 彼は直属の上司である工事部長といっしょになって、私をからかってきます。

「シンディーは経費の精算なかなかしないよねえ」

 そこで一拍おいて、


「印税あるから」


「ちょっとした買い物くらいなら領収書出さないからな」と工事部長。


「印税あるから」


 とそれがしつこい。

「印税あるから」「印税あるから」「印税あるから」


 俺はどんだけ、売れっ子作家なんだよっ!


 ああ、あるよ、確かに。どんだけあるか教えてやろう。

 電子書籍はトータルで約200冊売れたから、一冊50円として、1万円なり。


 どうだ、すごいだろう(しくしく)。


 と説明したところでなにも変わりません。

「印税あるから」「印税あるから」……。


 ついに私の名前はインディーになりました。

 印税+シンディーだから。


 鞭でしばくぞ!(それはインディー・ジョーンズだ)


 ここまで読んだ皆さん。嘘つくんじゃねえ。いくらなんでもそんな馬鹿な会社あるわけねえ。と思ったかもしれません。


 あるんだよ、それがっ!



 ちなみにシンディーの前はジュリーと呼ばれていました。

(忘年会で沢田研二を熱唱したから)

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