第4話 南野映画化目前? なんだってぇえ!

 ある日、打ち合わせに事務所に戻ると、ある人にこう言われました。

「○×(本名)さん、あなたの作品、もう少しで映画化されるところだったんだって?」

「はっ?」


 いったいなにをいってるんだ、こやつは?


「すげえな」

 ああ、たしかにすごいな。もしほんとうのことだったら。

 はは、もう驚かないぞ。こんな適当なことを言いふらしてるのは……。


 所長に間違いない。


 しか~し、よくよく話を聞いてみると、この件で暗躍していたのは、元請会社の若手社員。というか、新入社員。ぴかぴかの一年生。


 こいつ、ネットで、「南野海」の名前を検索しやがった。


 そして私が「堕天使の羽根」という作品で、福山ミステリー文学新人賞で最終候補に残り、本選考で落ちていたことを突き止めていたのです。

 この通称福ミスというコンテストは、本格ミステリー専門の新人賞で、受賞者はプロデビューしています。

 とくに第一回目の優秀作、「少女たちの羅針盤」は映画化されているのです。


 受賞作、映画化。

 南野作品、最終候補、おしい。

 もうちょっとで、映画化されるところだった。


 という穴だらけの三段論法で、「南野の作品、映画化寸前」というとんでも結論になったらしい。


 いやあ、まあ、いいんだけどさ。

 っていうか、もしほんとうに映画化されたら、きっと舞い上がっちゃうよ。

 でも、その前に小説家としてデビューしなくっちゃね。

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