第17話
神の属領ロドス島。この地で再び天使同士の聖戦が始まろうとしていた。
「おおユリエルよ、何という出力だ!新動力の力まさかこれほどとは!さすがはアルキメデス様、これなら何者にも負けはせぬ!」
新生ユリエル、その力は 以前にも増し更なる神々しさを放っている。間違いなくこの世で最強の聖戦兵器に違いない。
「おのれ堕天使ユリエル!そのおぞましき力、もはや野放しにはしておけぬ。我ら聖戦士の名に懸けて、なんとしてもこの地で葬り去らねばなるまい!」
「お二方も感じるであろう、このマリオンの聖性を!お望みとあらば何度でも我が信仰を示して御覧にいれよう!」
マリオンの信仰が燃え上がる。天使の出力が上がっていく。
「思い上がるな破戒僧、貴様が見せた異形の力、神は決して許しはせぬぞ!」
鎧を脱ぎ去るノエルとドリアン。民達の前に美しき神衣姿をさらけ出す。
否、全裸である。鎧の下は一糸纏わぬ眩き肢体、先の聖戦でもついに見せなかった全裸である。
「ああ……。」
二人を目にしたロドス島の島民はもはや意味のある言葉を発することは出来ぬ。瞬時に視力と正気を失いただ祈るのみである。
「もはや我らも出し惜しみはせぬぞ!我らの全裸を見た者、神を除いて猊下の他には貴様が初めてだ!反逆者マリオン!聖戦士の全存在をかけて貴様を滅する!」
天使ミカエルと天使ラファエル。二人の美しさに呼応し、二大天使の出力が急激に上昇していく。
「なんとお美しい、これがお二方の真の姿か!間違いなく美しさにおいてお二方に敵うものこの世には存在せぬだろう!私ですら正気を保つので精一杯だ!」
おそらく民の精神と視力はそう長くはもつまい、三分程で正気も光も完全に消し飛び、それ以上経てばは元に戻る事叶わぬだろう。
「民の為神命の為、ここで立ち止まるわけには行かぬ!さあ来い聖戦士よ!時間がない、早急に決着をつけてみせよう!」
三人の信仰が燃え上がり、三天使の聖性が一気に膨れ上がる。その出力既に聖典の世界である。聖性が触れ合えば一体いかほどの戦いになるか、もはや誰にも想像がつかぬ。三天使の制空権が徐々に膨れ上がり、今まさに聖性同士が触れ合おうとしている。
突如天から転移の光が降り注ぎ、三天使の聖性をかき消していく。
「おのれマリオン、正面切っての聖戦を恐れ邪な力に頼るとは!やはり外法に身をやつした破戒僧よ、もはや貴様に聖戦士の誇りは残っておらぬようだな!」
「違う、これは私ではない!…しかし一体誰の仕業だ?」
外法仏教はマリオンの手で葬り去った。今や相転移の力を扱える者などマリオン以外にいようはずもない。
「見つけたぞマリオン!正義実行者クレオ、天啓を受け地上に舞い戻った!」
なんと光の中から現れたるは山の国のクレオ、そして堕天使ジブリールである。
「その姿はクレオ!転移光から現れたということは、貴様も神の啓示を受けたのであろう!」
「その通りだ!私は貴様が作りし外法空間の果て、ついに我らが神居の入り口にたどり着いた!これすなわち神的を討ち滅ぼせとの神の啓示に他ならぬ!」
クレオの信仰が燃え上がり、ジブリールの出力が上がっていく。相転移に目覚めた堕天使の力、美しき肢体を晒す聖戦士達と何ら遜色がない。
「無知蒙昧なる異教徒よ、汝が見た光は我らが全知全能の神に他ならぬ、決して貴様らがあがめる邪神のものではない!門前にたどり着いておきながらなぜ分からぬか!」
哀れなり異教徒クレオ。その意志の強さと美しさ、類稀なる資質を持ちながら邪神の国に生まれたばかりに開眼の機会を逃すとは。もはや討ち滅ぼして目を覚まさせるしかあるまい。
「誰かと思えば山の国のクレオ!ちょうどいい、我らが同志聖戦士メリルを殺した大罪人よ、そこにいる反逆者と共にまとめて討ち滅ぼしてくれる!」
「ふん、見れば神王国の聖戦士か!人の心を惑わすその姿、我らが神は貴様らのような破廉恥なる存在を決して許しはせぬ!いいだろう、神王国の聖戦士共め、汝らまとめて地獄へ送ってくれよう!」
四大天使の聖性と魔性が膨れ上がり、今にも衝突せんばかりだ。
「まさかクレオまで現れるとは!一人だけでも互角の戦いそれを三人、そのような力果たして阻止できるのか!しかしこれも神命の為、なんとしても止めねばならぬ!」
―――摩尼システム起動、戦士よ、汝の信仰を示せ。
「!?なんだこれは」
突如どこからともなく耳慣れぬ声が聞こえる。
―――摩尼システム起動、戦士よ、汝の信仰を示せ。
「一体どこから…ユリエル、お前なのか!?」
この耳慣れぬ声は確かにユリエルから聞こえてくる。天の使いからの啓示であろうか。
「おおマリオン君、それはおそらく摩尼車だろう、何に使うか分からぬが巨人内部に内蔵されていたのだ。…しまった!使い方の分からないものをうっかり載せてしまった!マリオン君、それの効果は私にも分からぬ!いいか、絶対に使うんじゃないぞ!」
―――摩尼システム起動、戦士よ、汝の信仰を示せ。
「偶然とも言える未知の武装、これぞまさしく信仰を示せとの神の啓示に他ならぬ!四大天使がぶつかり合うのだ、今使わねばいつ使う!良かろう天使よ、我が信仰とくと見るがいい!」
マリオンの信仰が燃え上がる。ユリエルに内蔵された摩尼車がマリオンの信仰心に反応し眩き光を放ち始める。
「何をする気だマリオン!このような武装見たことがない!ドリアン、聖法バリヤー展開!衝撃に備えるぞ!」
「何なのだこの武装は!神王国の新兵器か!?いいだろう!わが聖戦結界貴様に破れるか!」
見たことのない兵器に驚く戦士たち。三天使は衝撃に備え防御の構えを取る。
ユリエルの出力は上がり続け摩尼車は一層光を強める。最初で最後になるであろう四天使が織りなす聖戦、摩尼車が切り拓く運命やいかに。
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