第15話

「マリオン!神王軍最強の聖戦士である我らの力、その身でしかと味わうがよい!」

マリオンの行く手を阻むノエルとドリアン。天使ミカエルと天使ラファエルの二大天使の聖性が膨れ上がりマリオンを襲う。しかしながら、数多の試練を乗り越えたマリオンの信仰に揺るぎはない。神王国最強の二大聖戦士を前にしてもマリオンは一歩も退かぬ。


「愚かな!聖戦士でありながら真の敵を見誤るとは。たとえお二方であろうと真の信仰に目覚めた私は止められぬ。天使ユリエルの力を以て、わが身の潔白を証明して見せよう!」

二天使の聖性を真正面から受け止めるマリオン。お返しとばかりにユリエルが放つ聖光によって、ミカエルとラファエルは機能停止寸前まで追い込まれる。


「おのれなんという出力だ!以前の貴様では考えられぬその力、それまさしく外道の法に手を染めた証拠なり!どうやら我々も本気を出さねばなるまい!」

ノエルとドリアンが兜を脱ぎ去る。脱ぎ捨てた兜が地に落ちた瞬間大地が揺れる。



「おお、なんという美しさだ!この世に生を受けてからというもの、あのような美しき姿今まで見たことがない!」

神王軍の兵たちは一人残らず涙を流し跪く。大地の揺れの正体は兵たちの歓声、そして信仰の高まりによって天使が放つ出力上昇の福音に他ならない。その光景、まさしく天使に対する神の地からの祝福そのものである。


「噂には聞いていたがなんという美しさだ!これがお二方が最強たる所以か!」

強靭な精神の持ち主でなければ目を焼かれかねないほどの美しさ。並の人間では到底耐えられぬだろう、ノエルとドリアンは己の肌を露わにすることを厳しく戒めているのだ。

「さすがだマリオン、我らの素顔を見て涙を流さぬとは、その信仰見上げたものだ。」

ラファエルとミカエルの出力が跳ね上がる。その強さ、先程までの比ではない。


「天に授かりしこの身体、我らの美貌は全て神の為にあり。我らが素肌を晒すのは祈りの時間と神敵討伐のみ!反逆者マリオン!その信仰が真に神に向けられたものであるか、我ら聖戦士がとくと見定めてやろう!」

ラファエルとミカエルの聖性が膨れ上がる。先程とは比べものにならぬほどの聖性がユリエルを襲う。

「さすがはお二方、なんと凄まじいお力だ!もはや私もなりふり構っていられぬ!」

もはやマリオンに余裕はない。天使ユリエルも聖性を全開にし、三天使の聖性が神の地でぶつかり合う。


「おのれマリオン、我らが素顔を晒してもなお力が拮抗するとは!仕方がない、この聖鎧を脱ぐしかあるまい!我らの姿とくとその目に焼き付けよ!」

ドリアンが聖鎧を脱ぎ捨て神衣を纏った姿を露わにすれば、そのあまりの美しさに兵たちは皆一人残らず失禁する。同じくノエルが鎧を脱ぎ去り神衣姿を衆目に晒せば、もはやその美しさの前に兵たちの菊門は役には立たぬ、皆一様に穢れを排し身の浄化を以て聖戦士に信仰を示す。

「凄まじい美しさだ!これほどまでに美しきものがこの世に存在するとは!しかし!神命実行のため、道半ばで命を失うわけにはいかぬ!天使ユリエル!その力を以てして、我と共に神への信仰を示すのだ!」

三天使の出力が上がっていく。さらに凄まじい聖性が渦を巻き、神の地の空は祝福の嵐で満ち溢れる。


「ええいなんという出力だ!もはや我らもなりふり構っていられぬ!神敵相手にこれ以上脱ぐのは初めてだが仕方がない!破戒僧マリオン!我らの肉体、冥土の土産にとくとその目に焼き付けるがよい!」

ノエルとドリアンが衣を脱ぎ去り、そのまばゆい裸体を晒す。もはや残るは下着のみ、その素肌どこまで行っても美しい。


「おお…美しい…。」

その美しき裸体は兵たちの目には眩しすぎる。その姿もはや直視する事叶わぬほどの美しさであるが皆目をそらすことなど出来ようもない。たとえ目の光を失おうとも身体中の孔からあらゆるものを排泄し、その御身を拝む事こそ神への祈りそのものなのだ。


この世で最大とも思える聖性がこの地に満ちる。三天使の出力は上昇し続け、もはやこの地にある全ての存在を粉微塵に浄化せんばかりである。


「おのれ…かくなる上は!」

「おやめ下さいお二方!このままではただでは済まぬ、その上これ以上脱がれては兵たちの精神と視力は二度と元には戻りませぬ!」

マリオンは下着に手をかける両聖戦士を必死に制止する。


「構いませぬ!今生最期の記憶がお二人の裸体など、神の戦士にとってこれ以上の幸福はありませぬ!我ら神王軍一同、聖戦士の眩き肢体を目に焼き付けて見事昇天して見せましょう!」

もはや兵たちに一分の迷いもない。兵たちの信仰の叫びがノエルドリアンの心に火をつける。


「よく言ってくれた!我ら聖戦士、貴殿らの覚悟しかと受け取ったぞ!皆の者、我らは今から下着を脱ぎ去る。神にしか見せぬこの姿、我らの裸体余す事なくその目に焼き付けるがよい!」

ノエルドリアンの手が下着をずらし始める。

「やめるのだお二方!…ええい、天使ユリエル、私はお前を信じる!その力、我が信仰についてこれるか!」

マリオンの信仰がかつてないほどに燃え上がる。天使ユリエルの出力が限界を超えて上昇し、聖性を全開にしたまま渦に向かって昇天光を発現させる。ユリエルが放つ昇天光は、いまにも破裂せんばかりの力の渦を三天使の聖性ごと高次元世界に転移させる。



「…信じられぬ。まさか我らの力を以てして神敵を滅する事叶わぬとは!」

先程までこの地に渦巻く聖性は転移の力で消え失せた。ミカエルとラファエルは激しい戦いの反動で出力が上がらぬ。今まで立ちはだかるすべての神敵を屠ってきたノエルとドリアン。このような事態は初めてだ。


「同志達よ、これでお分かりだろう!たとえ破門されても我が信仰に一点の曇りなし。聖戦士としてともに戦うこともはや叶わぬが、私の心はいつまでも同志達と共にある!」

傷ついた翼をはためかせ、唖然とする二人をしり目に何処かへ飛び立つマリオン。全ての神敵を討ち滅ぼすまで、マリオンの孤高の戦いはこれからも続くのだ。

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