第10話

天使ユリエルと共に王都へ向かうマリオン。行きがけの駄賃だと言わんばかりに各地で行く手を阻む敵を尽く討ち滅ぼし、まさしく奇跡のような活躍を見せる。その働きの甲斐あってか、マリオンが到着する頃には聖戦士復活の噂は王都にまで広まっていた。


「おお、噂は本当であった!聖戦士マリオンよ、天竺の邪教を撃ち滅ぼしよく戻ってきた。汝の活躍の数々、この王都にまで届いておるぞ。」

無事王都に帰還するマリオン、なんとそこには神王教の教主にして神王国の国王、法皇がお見えになっているではないか!


「おお、法皇様!まさか猊下が直々にお出迎えになられるとは!このマリオン、身に余る光栄にございます!一年もの間戦線を離れてしまった無礼をお許し下さい!」

法皇の言葉は神の言葉に等しい。マリオンは膝をつき、感激のあまり大粒の涙を流すのだった。


「面を上げよ、仏教徒殲滅の功労に比べれば一年など取るに足らぬ。聖戦士マリオンよ、そなたが戻れば山の国など恐れるに足らぬ。聖戦士の帰還を祝い、今宵は宴をひらこうぞ!」

法皇直々の宴など、神王国の誇る聖戦士とてそうそう経験出来るものではない。マリオンにとっては恐悦至極の極みである。しかしながら、マリオンには宴の前に果たさねばならぬ使命があるのだ。


「恐れながら猊下。今ここで宴など開けば、寂聞の毒牙にかかり散っていった同志達に申し訳が立ちませぬ。私が宴の席に着けるのは、全ての神敵を撃ち滅ぼし神の正義で世が満たされてから。是非とも私に活躍の機会をお与えください。」

法皇直々の宴を断るなど、本来ならば死罪に値する。しかしマリオンの死をも恐れぬ信仰は、復活の宴から聖戦士を遠ざけ、いつ終わるとも知れぬ聖戦へとマリオンを向かわせるのだ。


「よく言ったマリオンよ。それでこそ我が国の聖戦士、その信仰まさしく神民の見本である。ならば汝に神命を言い渡す。聖戦士の力を以て、我らが神都ウィーンを奪還してもらいたい。」

おお、猊下はなんと慈悲深いのであろうか。マリオンは思わず深々と頭を下げる。しかしながら、山の国の魔の手がウィーンにまで伸びていたとは。ウィーンはかつての神王国第二都市、マリオンが不在の間神王国はここまで追い込まれていたのだ。


「もったいなきお言葉、恐悦至極の極みにございます。このマリオン、聖戦士の名に懸けて必ずやウィーンを奪還し、神王国再興の足掛かりと致しましょう!」

王都で一息つく間もなくウィーンへと飛び立つマリオン。聖戦士に安息の地はいらぬ。役目を終えて天国へと昇天するその日まで、聖戦士マリオンは神命のため戦い続けるのだった。

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