第9話
神王国の属国天竺。かつて聖戦士マリオンと邪教の毒婦寂聞が聖戦を繰り広げたこの地に、突如天から眩い光が降り注ぐ。
「おお…これはまさしく地上の景色。神王の民よ、私は帰ってきたぞ!」
無限に続くかと思われた長い長い次元間トンネル。無限地獄を途切れることなき信仰によって踏破したマリオンは、聖戦士として再び地上に舞い戻った。
「そこの者、名を名乗れ!先程の奇っ怪な光、さては貴様仏教徒の残党か!」
何者かに呼び止められるマリオン。呼び掛けに応じようと振り返ったマリオンが見たものは、この場に居る筈のない者たちであった。
「貴様らは山の国の軍団!私は聖戦士マリオン、なぜ神の属国たるこの地に貴様らのような異
教のものがここにいる!」
マリオンを呼び止めるは山の国の軍勢、彼らのような異教徒が神の地に足を踏み入れるなど決して許されることではない。
「マリオンだと?貴様は一年前に死んだはず!神王軍などとうの昔にこの地を捨て退却したわ、今や天竺は山の国の属領よ。」
にわかには信じがたい事を話す山国軍。しかしそれを証明するかのように、この地に神王教の信仰は感じられず、民の精神を汚染する異教の邪気に満ちている。
「なんということだ、私は一年間も次元の間をさまよっていたと言うのか!私が居なかったばかりに神の地を失ってしまうとは!」
後顧の憂いを断つはずがまさか神敵の進行を許してしまうとは。この失態、自刃などでは決して贖いきれぬ。神敵の掃討を以て神に贖罪せねばなるまい。
「四人の聖戦士を失った神王国など我々の敵ではない。マリオン、貴様が生きていたのは想定外だが逆に都合がいい。我らが神の裁きを受け、再び地獄へ落ちるがいい!」
マリオンを始末せんとゴーレムに乗り込む山の国の兵士。一年ぶりに地上に戻ったマリオンだが、神の従者たる聖戦士に安息日はない。
「神王軍聖戦士を始末するなど思い上がりも甚だしい。貴様ら邪教の者が神の地を踏み荒らすなど許しておけぬ、神の名のもとに裁きを下してくれよう。」
マリオンの信仰が燃え上がる。どこからともなく天使が現れ、辺りに聖性が満ち溢れる。
「フン、天使ユリエルか。一年前ならいざ知らず、今や貴様らの偽天使などガラクタに過ぎぬわ。我ら山の国が誇る最新鋭神命実行兵器の力、思い知るがいい!」
ゴーレム部隊の出力が上がる。この力で神の地を蹂躙したのであろうか、今までに経験したことがないほどの魔性が天使ユリエルを襲う。
「なんというおぞましき力よ。以前のゴーレムとは比べものにならぬ。しかし!その程度の力が次元の間を切り抜けた私に通用すると思うか!」
天使の展開する聖法バリヤーがゴーレム部隊の魔性をかき消していく。
「聞け、異教の者どもよ!聖戦士マリオンは再び現世に舞い戻った!汝らの鮮血を以て号令とし、これより聖戦を再開する!」
天使の出力が上がっていく。山の国がいかに小細工を弄しようとも、次元間トンネルを踏破したマリオンの信仰の前には無力である。天使が放つ聖性の前に、ゴーレム部隊は瞬く間に浄化される。
「もはや休んでいる時間はない。すぐさま王都に赴き、我らが神王国をお守りするのだ。」
地上に帰還したマリオンの信仰はより一層強くなり、今や天使の翼で世界の果てまで行けるほどに力が溢れている。天使ユリエルの翼は力強く羽ばたき、マリオンと共に王都へ向かうのだった。
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