第2話 異世界《いせかい》ですって!
部屋の中のキッチンには、二人の男性と二人の女性がいた。
男性の一人はがっしりした体つきの二十代後半くらいで、赤い
もう一人の男性も二十代後半くらいのようだ。やや
二人の女性も二十代後半に見える。二人とも
一人は長いストレートの黒髪。もう一人は
二人とも
ボブカットの女性は、どこか
む。私を見て手をにぎにぎしているのを見た
そういえばボブカットの女性だけ、私を見る目がちょっとちがうような気がするわ。だ、大丈夫かしら?
どうやらこの家は、
大剣の男が、
「おいおい。コハルの横のキツネは?」
と言うと、ドワーフのゴンドーが、
「コハルが召喚したキツネだってよ」
と答えた。
すると黒髪の女性が、
「え? コハル! あなた、一人でやっちゃダメって言ったじゃない!」
と
コハルを見上げると、
「ご、ごめんなさい。リリー」
と
するともう一人の男性が
「まあまあ。エディもリリーもそこまででいいだろ? 見たところキツネのようだし。それに……、ヒロユキがやれってうるさく言ったんだろ?」
と言うと、ヒロユキがびくっとなって、
「だってさ。コハルったらシルフを呼び出して見せるっていうんだぜ? たまたま召喚魔法の
ボブカットの女性が、
「ほらね。……ヒロユキ。あなた、後でお
「う。わ、悪かったよ。」
エディと呼ばれた大剣の男が手を打ち
「まあいいだろう。ただし二人とも後で
するとリリーと呼ばれた長髪の女性が私の近くにやってきた。魔力の動きを感じる。
っと、私はあわてて
その途端、しゃがんだリリーが「アナライズ」とつぶやいた。
リリーの
リリーが、
「う~ん。本当に普通のキツネね。……ね、コハル? あの本に書いてあった召喚魔法を使ったのよね?」
「うん。そうだよ」
「そう……。あの魔方陣は魔力のある生物を呼び出す魔方陣だったはずだけど。まあ、こういうこともあるのかな?」
首をかしげながらリリーが立ち上がり振り返ると、ボブカットの女性がやってきて、
「ね。ね。
うげっ。わきわきした手が
あわててコハルの後ろに
黒髪のリリーが、
「ソアラ。ほらほら。
ソアラと呼ばれたボブカットの女性はため息をつくと、
「ううぅ。そうね。……よし、あきらめないぞ」
……いや、それはちょっと。あきらめてください。
私の内心の声をよそに、リリーが、
「ほら、エディもフランクも待っているから、すぐに食事にしましょう」
とソアラを立たせた。
ヒロユキとコハルも
う~ん。私はどうしよう?
魔力から生まれた私はエネルギーを
それって
するとリリーが私に気がついて、お皿におかずをとりわけて床に置いてくれた。
ま、いいか。
人間たちが
「なあ。それでこのキツネ。名前はなんていうんだ?」
と誰かが言い出した。
コハルが「う~ん」と考え込んだ。
私は、あわてて
リリーには……、大丈夫。魔法が気づかれていないみたい。
コハルがはっと気がついたように、
「ユッコよ」
と明るくこたえた。
――――
それから3日間。みんなの会話を聞いて、何となく
どうやらここは私のいた世界とは別の世界のようだ。
なんでもこの世界には三つの
大きさは北アメリカ大陸くらいの広さで、中央に島のある大きな
かつてはこのロンド大陸は全体で一つの国だったそうで、その
それが今から1000年前、当時の王様の子供たちがそれぞれ東西南北に国を
王家の
この中央の湖を「湖の国」、その北を「ノースランド」、東を「イースト王国」、南を「サウスフィール」、西を「ウェスタンロード」という国になっている。
もともとは同じ家族によって治められていた5つの国だが、100年もたったころにはそれぞれが
300年前、当時は互いに争っていた5カ国だったが、西の海の向こうの大陸オーカーから大軍が押し寄せて大戦争となった。
戦争は100年続き、5カ国が
それから5カ国の王家が互いに
会話を聞いている限りでは、この世界には普通の動物のほかに
あちこちに住んでいるが、特に北の大陸には
……どうやら人間の考えでは、人間と同じような姿形をしているものの
魔族には
魔獣や魔物は動物と
それによって、ロンド大陸から北の海にあるダッコルト大陸に住む人々が魔王軍に攻めほろぼされ、魔獣と魔物の
ただし、伝説ではその時に
まあ、
この家は、ロンド大陸の
ここに住んでいるのは
冒険者とは、国家の
ちなみに、ここの冒険者はリーダーが大剣士のエドワード、サブリーダーが魔法使いのリリー。
ヒロユキとコハルはこの五人に
――――。
「ヒロユキ、コハル。いるー? 村へおつかいに行ってきてちょうだい」
ヒロユキがめんどくさそうに立ち上がると、「ええ~」と
リリーは
「めっ! ……これも
と軽くしかった。
コハルは、「は~い」と言いながら立ち上がって
私は
「ユッコ。行こう」
うん。こうして見ているだけだとヒマだし、私も村を見てみたいわ。
立ち上がってユッコの近くによると、ヒロユキもしぶしぶついてきた。
コハルがカゴを片手に、リリーとソアラに、
「行ってきまーす」
と手をふった。
はじめての村へのおつかい。私はうきうきして、
のどかな
ヒロユキが、
「冬も終わって、もう春だなぁ」
とつぶやいた。
そう。どうやらこの
コハルがクスッと笑いながら、
「もう早朝の水くみも寒くないね」
というと、
「まあな。……でもすぐに
とヒロユキがぼやいた。
村とはいっても50
少し
その外側には
木や
木々の中にはピンクや黄色、白色のたくさんの花をつけている木がある。……ピクニックみたいで気分がよくなるわ。
二人は、
おばちゃんが、
「あら。コハルちゃんにヒロくん。おつかいかい?」
と二人に声をかけている。
冒険者なんて、一般の人からはいやがられることもありそうだけど、どうやらコハルたちのチームはこの村に受け入れられているみたいね。
二人が野菜を仕入れている間、私は並んでいる野菜をながめていた。
ふむふむ。
おばちゃんから受け取った野菜をカゴに入れ、ヒロユキがそれを持つ。
……ううむ。やっぱり文字とかも読めるようになっていた方がよさそうね。
うはっ。魔法書といい、知らないことが多くてワクワクしてきた。
冒険者っていってたわよね? ということは色んな所へ行くってことよね!
どうやら知らずにうちに尻尾をふっていたみたいで、ふと気がつくとコハルが温かい目で私を見つめていた。
「ユッコってばごきげんみたいね」
「うん? そう? 俺にはよくわからんけど」
「んもう。
「
「うん。揺れてるよ」
……ピタ。思わず尻尾を止めて二人を見上げると、コハルが苦笑していた。
「あちゃぁ。見過ぎちゃったかな? ごめんね」
お店を出ようとすると、お店のおばちゃんが、
「あ、そうそう。こないだ
と
コハルが、
「え~。そうなの? でも魔王って言われても
と言うとヒロユキが、
「へっ。今度は俺が勇者になって
と
……魔王ねぇ。そういえば私のいた世界にもいたなぁ。
そういえば私を一目見てなぜかブルブル
思い出すと笑いがこみ上げてくるわ。
「あっ。ユッコが笑ってる」
顔を見上げるとコハルがにこにこして私を見ていた。
な、なによ。ちょっと思い出し笑いしただけじゃない。私はちょっと恥ずかしくなって、ふいっと顔をそらした。
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