X23 真実!
「瀬奈ちゃん、朝から機嫌いいね!」
「そぉ? んーふふっ」
やっぱり私は顔に出やすいのかな。
でも今日ばかりは仕方ない。なにせ念願のダイブができるんだ。真水のプールとはいえ、潜り放題なんて夢のような話だ。
「それに大荷物だね! 何持ってきてるの?」
「これはね、私のダイビング用セットなんだ」
ウェットスーツにBCジャケット、レギュレータにオクトパス。あとはマスクとフィン、ブーツ。それにウェイトだ。全部専用のキャリーケースに入ってる。
「すごいね! じゃあ今日から潜るんだ!」
「うんっ。部長がね、ダイビング用プール用意してたんだよ」
「ダイビング用? よくわからないけど面白そうだね!」
面白いよー。今度一緒にダイビングやろうよ。
ああ、早く放課後にならないかなぁ。
今日は授業がとても長く感じた。どれだけ楽しみにしていたんだろう。
そして廊下へ出ても部長が待ってない。またかなりあ先輩と腕組んで行きたかったのにな。
まあいっか。部室ーっ。
「早かったな」
「そんなことより早く行きましょうよ」
「なんかやけに積極的だな」
そりゃああんな施設見せられたら潜りたいに決まってるじゃん。私の手のひらはドリルよりも速く回るんだ。早くしないとまたひっくり返っちゃうよ。
「ところで、私の他に誰が潜るんですか?」
「ん? お前1人だけだが」
は?
「……部長、ちょっと座ってください」
「必要ないだろ」
「いいから座ってください」
それから私は部長に説教をした。ダイビングは必ず2人以上で行うもので、バディがいないとかありえないことをくどくどと説明する。
これは長く多く潜っている人ならばよくわかっていることだ。1人で潜るというのはとても危険で、慣れた海だろうといつ何があるかわからない。
1人で勝手にやって勝手に死ぬのに文句を言われたくないなどと言わせない。その人のためにたくさんの人が捜索に出たりしないといけなくなるし、ダイビングが危険だと思われ、規制とかされるかもしれない。1人の身勝手が世界中の人に迷惑をかけてしまいかねないんだ。
「────というわけで、ダイビングというものはですね」
「……わかった、すまない。ダイビングについて勉強不足だったことは認めよう」
あらま、意外にも自らの非を認め、謝罪してきた。
まあ普段からエクストリームだの言っているんだから、危険性とかについては敏感なんだろうね。
「ではそうだな……とりあえずはかなりあを付けよう。教えてやってくれ」
「喜んで!」
かなりあ先輩と同じ水! これで私にも美人がうつらないかな。
「というわけで智恵文先輩、ウェットスーツを選びましょう」
「うん。どれがいいのかな」
そんなこんなで今、私とかなりあ先輩は部長の家にある私のダイビング施設でかなりあ先輩のダイビングセットを選んでいる。
「でも私、あまり機材とか知らないんですよ────っと、これにしましょう」
色々あるスーツの中から私が選んだのは、
「着るのに少しコツがいりますけど、そんな大変じゃないんで教えますね」
「てな感じで、準備できましたー」
「ん? やはり藤岡はそのスーツだったか」
「どういうことですか?」
「横に
「ああこれ、シーナって読むんですよ。実は私が開発中にテストしたブランドなんです」
商品の開発テストなんてそれなりの実力がないとできない。だからこれは私のちょっとした自慢なんだ。
「……ああ、やはりそうか」
「だからどういうことです?」
部長が何を言いたいかいまいちわからない。
「スーツなど発注したとき、メーカーの人が来てな。それはセナという名の少女をモチーフに開発したものだと言っていたんだ。これを見ろ」
えええっ!? そんなの聞いてないよ!
そして部長が見せたのは、Sea-Naのパンフレットだった。
「……ナニコレ」
カタログに載っている、海の中の写真。あれもこれも、全部私が写ってるじゃん!
そしてお決まりの「撮影/北峰竜二」という文字!
うあああああっ、超絶恥ずかしい!
なんで!? どうして!? 意味わからない!
今日は私のお父さんが、実は親バカだということを知ってしまった。
エクストリーム! 狐付き @kitsunetsuki
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