X21 評価!
「さてさてどんな質問をしてくるのかなー?」
優美さんの言葉に、部長たちはお互いの顔を見合わす。まるで互いに誰が先に口を開くか押し付け合っているみたい。
「それではまず代表として、俺……いや、僕から聞かせて頂きます」
部長が僕だって。ちょっとおかしくて吹きそうになる。
「なにかなー?」
「引退の理由をお聞かせ願えますか?」
「えっ、私引退なんてしてないよー?」
「なっ!?」
部長がやばいことを聞いてしまったと言いたげな顔をした。そりゃあ引退していない人に向かってなんで引退したのなんて失礼極まりない台詞だしね。
「あー、でもあれだねー。表舞台から姿を消した的な?」
優美さんがうちへ来たのが6~7年前。それから5年くらい修行をしていたから、大会とかに出ていられなかったんだろうね。
「私は今写真家だからねー。まあ言っちゃえばエクストリーム写真撮影競技を1人でやってると思ってくれればいいよー」
「な、なるほど……」
優美さんの破天荒な撮影はまさにエクストリームって感じだし、現役と言えるかもね。
初めてやったのはウェイクボードでジャンプし、逆さまになりながら他のプレイヤーの撮影だ。そんなものボートから撮影して逆さまにすればいいだけのことなのに、優美さんは『臨場感、出ますよー!』と笑いながら言っていた。
ピントはぼけていたしブレ気味だったけど、その写真の迫力はお父さんたちでさえ唸ったほどだ。
雑誌社とかの人からは北峰流と言われているけど、みんなの中では優美式って呼ばれるほど今では撮影スタイルのひとつになっている。
エクストリームブレックファースト的な考え方だと、確かにエクストリーム
「それでは次に、あなたから見る藤岡瀬奈はエクストリーマーとしてどうですか?」
うわっ、嫌な質問来た! やっぱりこの人無礼者だ!
「うーん、瀬奈ちゃんねぇ……。まあぶっちゃけビミョーかなー」
「えっ」
部長が唖然とした顔してる。やだもう、恥ずかしいこと聞かないでよ!
「エクストリーマーとしては三流も三流、超ビミョー。遊びでやってるだけって感じかなー」
「そ、そうですか……」
だから言ったじゃん、私は大したことないって! 勝手に期待していた部長が悪いんだからね!
「ではやはり3分潜れるとかはブラフだったか」
「えっ、3分くらい潜ってられるのは普通でしょー?」
「あ、いえ、それは……はい……」
ほらやっぱそうじゃん! 部長が肺弱いだけじゃないの? たばことか吸ってる?
「まーエクストリーマーとしてはダメダメだけどさ、スキューバだけなら私より上だから、そういう場面で使ってみるのはどうかなー」
おお、なるほど!
優美さんはきっと、私をスキューバだけやらせてあげてと遠回しに言ってるんだ。
すごいよ優美さん。暫く会わないうちに気遣えるようになったんだね。
それから主にかなりあ先輩がいろんな話をし、今日は解散した。
「みんな大人しい子だったねー。あんなんで大丈夫なのかなー」
「普段はあんなじゃないですよ。それよりありがとね」
「ん? なにがー?」
「私がスキューバ以外駄目だって誘導してくれたじゃない」
「あーあー、だってほんとのことじゃんー」
うん、自分でも普通レベルだと思っているんだけど、それだと部長の話と噛み合わない。
「もしあの質問が、
「プレイヤーとしての?」
「そう。プレイヤーとエクストリーマーには決定的な違いがあるんだよ。瀬奈ちゃんにはエクストリーマーに必要なものが無いからねー」
どうやら私にはエクストリームをやるための何かが足りないようだ。
まあ潜らせてもらえれば私としてはどうでもいいから、気にならないけどね。
「それでプレイヤーとしての私の評価って何?」
「もうちょっとがんばればプロで生活できるくらいかなぁ」
えー、それって結構高くない? 優美さん私には甘いからなぁ。
そんなわけで今日、私はエクストリーマーとして駄目な子であると発覚した。
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