18代:グレンブル帝紀前編 -帝国崩壊の序曲-

 イノドローの後を継いだ18代目皇帝グレンブル・ベアラ・ダブノー・カラノベルデ・ロード・オブラビア・ノーグス・ソー・ド・フンダは、イノドローの長男で、父親によく似た没個性の皇帝だった。自ら何かを主張することもなく、宮中の奥で静かに日々を過ごした。イノドローは、彼を皇太子に決めた時、その性格から、グレンブルであれば引き続き輔弼内閣に政治を委ねて大過なく過ごせるだろうと考えた。彼が母親からそう判断されて帝位についたことに倣ったのだ。

 しかし、後々の事を見ると、この判断は正しくなかった。時にはトップ自らが行動しなければならない時が到来することも歴史上には起こりうる。

 なにより、イノドロー自身には確固たる思想があったが、グレンブルにはそれがなかった。表面的には同じように見えても、内実はまるで異なる人物だったと言えよう。

 グレンブルの下に、ベリゾン・エルベレード・アルゾワ・ロード・ヴァンディーン・ガモード・シュオン・ド・フンダという弟がいた。こちらはむしろ活発積極的な性格で、自ら軍の士官学校に入り、軍人となった。だが、これはおどろくべきことでもあった。

 なぜなら、比較的軍事大国のこの国では、意外にも皇族で軍人になるものは過去いなかったからである。名誉的な軍の階級称号を持つものですらほとんどなかった。歴史的に、この国では皇帝や皇族は、軍をはるかに超えた権威によって軍を支配下に置くものとして存在していたからであった。軍を率いるときも、それは将軍としてではなく、その上の皇族として率いた。むしろ軍人になるのは、貴族か平民である、という認識が少なからずあったといえる。それゆえ、この国には歴史上、軍人が反乱を起こして帝位を狙うといった行為は見られなかった。それだけ皇帝の権威は崇高だったのだ。たとえ実質的な権力がなくても、皇帝という存在は侵してはならないのである。

 そんな伝統があるから、ベリゾンの生き方は、皇族や伝統ある貴族らの眉根を顰ませることになった。軍の方でもこの跳ねっ返りな皇子をどう扱ってよいか戸惑いは大きかった。

 ところがベリゾンはそういう状況を、自らの熱意でクリアしていった。たとえ教官や上官が遠慮しようとも、自ら過酷な訓練に取り組み、必要な学問を学び、兵器の扱いもマスターしていった。周りが訝しがるほどのその熱心さは、やがて同期生らの支持を得られるようになり、軍部の中でも評価されるようになった。皇族だからとて容赦はしないぞ、などと公言する高級士官も少なからずいたが、だんだんと彼の存在を認めざるを得なくなっていった。地位以上にその能力と熱意によって出世も早く、22歳で中尉になると、その後は昇進し続けて、24歳で少佐、27歳で大佐、31歳で准将になった。この年、帝国第一艦隊参謀長に就任。

 主体性を持たない皇帝グレンブルと、若くして軍部にその存在を示すようになった皇弟ベリゾン。

 両者の関係は悪いものではなかった。と言っても友好的だったわけじゃない。

 ベリゾンは帝位には興味がなかった。宮中に参内し、兄と顔を合わせても、マイペースに会話し、兄の性格に対しても特に感情を露わにすることもなかった。皇帝の方でも、この変わった弟をおかしな男だとは思ったが、特にそれで厳しく接することもなく、警戒している様子もなかった。

「兄上は相変わらずですね。こんな面白みのかけらもない宮中で、毎日楽しいですか」

 などとベリゾンが紅茶を飲みながらズケズケ言えば、皇帝は苦笑すら浮かべず、

「お前よりはマシだ。軍人なぞ、どこがいいのか」

 と呆れた口調でやり返すが、この二人に感情的対立はなかった。お互い、あまりにも違うので、相手のことをどこか、別の銀河から来た異星人か、あるいは無機質な鉱物のように見ていて、その変だと思う部分にも、ちょっと首をひねって、ま、よいか、という感じで終わるのである。幼い頃からあまり一緒に遊んだりしなかったので、肉親としての親愛の情は薄いが、その分、嫌悪や憎悪の感情からも縁遠いのかもしれなかった。

 周りの側近や政治家らのほうが、二人の間柄を心配していたが、これが何事もない平時の時代であれば、風変わりな兄弟で終わったかもしれない。

 こういう関係が大きく変わったのは、彼らに要因があったわけではなかった。

 帝国が、建国以来最大の外敵危機を迎えることになったのである。

 

 この頃、銀河の片隅を占めるまでになったフン帝国であったが、銀河には他にも無数の国家があった。総数はわからない。すでに一千万を超えるほどであったろうが、誰もそこまで調べたことがないからだ。人類はあまりにも広がり、バラバラになりすぎた。その居住範囲がひとつの大陸や一つの惑星内だけで収まっていた時代の人々には想像もつかない、認識の領域外の時代となっていた。

 そして、この広い銀河の中には、同じように地域の覇権国家にまでなった国が幾つか存在した。キーナ朝ビョーテス帝国、デザル人民共和国、グアダルマンロー合衆国、グズ教団聖公会派諸侯連合などが有力な国家であった。いずれも100以上の星系を支配する大国だ。

 そして、それらの国を凌駕し、この当時、銀河最大の国家と称されたのが、メリスボーン連邦共和国である。共和国とは言っても、形式的な制度上の話で、実質は7つの特定の有力家系が大統領職を交互に歴任する門閥連合のような国家だった。歴史的に統一王制だったことがなく、複数の共和国が離散集合を繰り返している内に巨大化したものだった。特に力を持っていた有力7家(ビッグ7)は、いずれも政治家や企業家の出身で、王族だったり民族首長だったわけではない。そういう意味では、民主制という意味ではなく、古代中国にあった有力者による「共和」制の方に近いかもしれない。もともとの民主制が、長い歴史の中で制度自体が変質してしまい、今のような特定有力一族がお互いに牽制し合いながら各界に影響力を広げて支配するという体制になっていった。国家体制だけでなく、7家に属する企業や団体もまた同国の枠を超えて国際的に影響を及ぼしていた。

 ちなみに、家と言っても、庶民のそれとは意味が違っていた。この7家は差こそあれ、いずれも血縁のある一族だけで数千人、直属の家臣や郎党などそこに属する人々も含めれば、数十万人にもなる巨大一族である。7家に続く他の有力氏族もみなそうだった。

 この国に従う自治属国数ではフン帝国に劣るが、直接統治している星系の数は558におよび、フン帝国よりも大きかった。その中には、7家が私的に所有する星系や、直轄する星系も含まれている。140個艦隊を擁し総兵力1億5千万。総人口9500億人という超大国である。首都はハイ・ヘヴン星系の第3惑星ケロノビス。首都の人口だけで361億人、惑星全土が都市化してしまった銀河でも珍しいところだ。この時の大統領はレミントン=アルファ家の当主、イーリー・ペイン・レミントン=アルファ、56歳であった。先祖代々企業経営を続けてきたビジネスマン一家だが、その規模たるや1500万社以上の企業を傘下に持つ巨大星間コンツェルンの総帥である。

 この超巨大国家メリスボーン共和国とフン帝国は、近年になって領土が近接し始めていた。すでに経済流通圏は重なるようになっており、ビジネス紛争は少しずつ顕在化していた。しかし両国の間では、国交が樹立しているだけで、明確な国家同士の関係性を決める条約も、様々な法的協定も結ばれていなかった。

 どちらの国の企業も、相手国の市場に魅力を感じていたが、同時に相手方の政府を邪魔に思っていた。その傾向はメリスボーン側のほうが強く、企業を傘下に持つ有力家系が力を持っているだけに、企業の政府に対する働きかけは強かった。

 それでも、経済的な問題は、まだ国家同士の対立に発展するほどにはなっていなかった。


 どのような歴史的事件も、きっかけは些細なところから始まる。

 多くの市民にとって、何年後かに自分や家族の生命、財産に影響をおよぼすようなことが起こるとは、誰も思わない。

 両国の関係も最初はそうだった。

 メリスボーン共和国の大統領イーリー・ペイン・レミントン=アルファにとって、近年、頭を悩ませる出来事が起こっていた。

 それは、ビッグ7の中でも、レミントン=アルファ家と並ぶ有力氏族、ドーバル家との関係だ。

 レミントン=アルファ家が主に貿易や投資によって巨大化していったのに対し、ドーバル家は資源やエネルギーの生産によって大きくなった家である。ビジネスの方向性がまるで異なる。

 レミントン=アルファ家は、無駄なエネルギーを投じず、効率よい利益の追求が家訓であった。貿易商社として仲介取引した利益を、無駄なく投資に回し、利益を確保してきた。得意とするのは金融市場、証券取引、それに資産価値の高い国家や企業に投資して利益を得る手法だ。そのため、とてつもない経済力を持つ割には、固定資産はさほどでもない。数百の惑星に置いてある関係施設の建物や土地などの資産以外は、ビジネスの規模の割には少ない。しかし保有する証券の類や各種権利はとてつもない量である。そこから湯水のごとく利益が生まれてくる。一般市民の生涯に稼ぐ額を、この家ではわずか数秒で稼ぎだすのだ。

 それに比べて、ドーバル家の稼ぎ方は昔からの古臭いやり方に見えた。ドーバル一族は、470年ほど前に、共和国内にある惑星クロドポリスに移住して、そこにある資源に目をつけ、徐々にのし上がった。その後も、恒星間世界へ手を広げていき、利益を次の資源惑星の探査と開発に使い、歴代当主は資源を採掘して売る手法を貫いてきた。ドーバル家自身、「自分ち」として星系をひとつ、まるごと所有している。ここにヘルニウムという希少価値の高い元素鉱物が産出する惑星があるからだ。

 ドーバル家の、鉱山を採掘し、資源を消費国へ運んで売りつけるというやり方は、利益は大きいものの、効率は悪く、天体現象や惑星災害の影響も受けやすい。レミントン=アルファ家から見れば、「実に無駄な方法」だと思うのである。一方、ドーバル家からすれば、レミントン=アルファ家のやり方は蜃気楼を眺めて喜ぶようなもので、実質的な価値に乏しく、経済状況に左右されやすく、一歩判断を誤ると全て失いかねない淡いものであった。

 両家はともにメリスボーンの政治を動かしていたが、両者の思想は相容れることはなかった。そのため、共和国の行政システムは、必ずしも統一性があるわけではない。ソブリン・ウェルス・ファンドである「メリスボーン投資庁」は、実質はレミントン=アルファ家の意を受けた人々が動かしており、資源探査を担う「資源開発庁」はドーバル家の関係者が深く関与していた。

 共和国大統領職は、この2家以外のラーザル家、アルザイーン家、ワッサム家、リャン家、タダー家の5家を含めたビッグ7が交代で務めているが、政府機関の中には、このように特定の家の私的機関のようになっているものもあったのである。

 ビッグ7の中でも、特に力を持っているレミントン=アルファ家であったが、近年、経営に不振が続いていた。それはフン帝国との領土が接近するようになり、その経済圏が重なるようになったためだ。

 経済圏の重なりは、必ずしも悪いことではない。新しい取引先も生まれるし、消費市場の拡大にもなる。特に資源の消費先として、フン帝国の辺境は注目すべき地域であった。帝国の主要地帯から運ぶより、共和国から運ぶほうが安上がりとなれば、取引は成り立つ。未開発の惑星も多く、開拓事業を受注することも出来た。だから、ドーバル家はフン帝国との関係強化を強く主張した。ドーバル家の当主、ラシッド・ラース・ドーバルは、次の大統領職を狙っており、現在一期目のイーリー・ペインとはライバル関係にあった。

「古臭い」手法である資源貿易のほうが、開発途上の地域にとっては重要で、利益に繋がる。一方金融は、現金を動かすという意味では、経済の血液とも言える部門だが、金融取引を目的とするビジネスは、開発途上の地域にはあまり意味が無い。

 そのため、レミントン=アルファ家はフン帝国からはさほど利益を稼げないでいたが、ドーバル家は市場を広げ始めていた。

 焦ったイーリー・ペインは、帝国辺境へのビジネス販路拡大を進めると同時に、豊かな帝国本土にも目をつけ、ラシッド・ラースより先に帝国政府関係者との接触を試みた。

 そして、外交調査団を密かにフン帝国へ送り、自国に有利な貿易協定を結べないか探りを入れようとした。

 ところが、ここで問題が起きてしまう。

 レミントン=アルファ一族が経営している貿易会社「レミントンISTC」と帝国辺境にシェアを持つ企業グループ「オイスカ社」とが行った取引が、帝国の関係者の神経を逆なですることになったのだ。オイスカ社は実は、辺境自治州ウールン自治領をフン帝国から独立させようと画策するウールン民族解放戦線の影響下にあった。ウールンはかつては独立国家だったが、ヴィデット帝時代に外交的圧力に屈して帝国に臣従した歴史を持つ。オイスカ社の利益は、反政府運動の武装資金へと流用されたらしい。

 フン帝国の外務省関係者が、派遣されてきた外交調査団に対して抗議し、事態の調査と対策を求めた。調査団には寝耳に水の話だったため、報告を後回しにして情報収集に回った。そのため、報告がイーリー・ペイン大統領のもとに届く前に、情報を集めていたラシッド・ラースの元に伝わってしまったのである。しかも悪いことに、イーリー・ペインが、報告を受けるまで、オイスカ社がそういう企業だということを知らなかった。市場拡大を焦って調査を怠ったのである。

 ラシッド・ラースは、このことを問題として取り上げた。イーリー・ペインに大統領としての資格はない、という主張を添えて。

 失点となることを恐れたイーリー・ペインは、挽回策を探って、別の情報を入手する。それは、帝国の別の企業が、メリスボーン共和国辺境域に進出してきて、地元企業との間で紛争になっていること、その情報をラシッド・ラースが得ていながら、この先の帝国との取引を期待して秘匿していたということだった。

 イーリー・ペインは、これをラシッド・ラースに対する反撃として利用したのだが、これが思わぬ波紋を呼ぶことになった。自国の企業を守れない政府はおかしい、守るべきだ、という意見が各地で湧き上がったのである。他の5家のどれかが、イーリーとラシッドの争いに反発して陰で市民を煽っている、あるいはラシッドが事態をごまかすためにそういう運動を支援している、という噂もあった。

 いずれにせよ、イーリーにとっては予想外の事態だった。彼はフン帝国と争う気はなく、むしろ経済関係を結びたいという点では、ラシッド・ラースと同じであったはずだ。

 しかし、市民の思わぬ動きに、イーリーは帝国企業に対してペナルティを課さざるを得なくなり、これまで曖昧だった関税等の取り決めも、帝国との間で進めなければならなくなった。当然、自国有利に話をすすめるしかない。

 これが今度は帝国の反発を買い、交渉はもつれ、それがラシッド・ラースの政府批判に発展し、さらなる強硬姿勢を見せなければならない悪循環に陥った。

 たかが辺境の経済紛争が、国家間の対立に発展したのである。


 事態の悪化はフン帝国側にも原因があった。ヴィデットの外交拡大路線と、イノドローの不拡大路線を経て、皇族や貴族、平民らの新しい世代が政府要職に就くようになると、彼らはそれまでとは異なる考え方を持つようになる。新皇帝のもとで新しい体制が始まったばかりでもあり、それゆえ、自分たちが帝国を担う、という過剰なプライドもあった。

 彼らは、メリスボーン側の態度に反感を露わにし、偉大なる我が帝国が侮辱されるのを看過できない、と叫ぶ貴族らも現れた。この紛争がもし、ヴィデット帝時代に起こっていたら、巧みな外交と、密かな工作によって、国家間の対立にならずに方向転換させることも出来ただろう。イノドロー帝の時代でも、争いを回避するように、何らかの妥協案が模索されて、条約などが成立したかもしれない。

 しかし、この2代半世紀を経て、大きく変わってしまった。長い平和の時代を経ると、人々の心情は、外交の難しさや戦争の悲惨さよりも、軍事冒険主義や軍事浪漫主義の方に傾いてしまう。

 両国で似たように人々が好戦的になり、それに押されるように政府も態度を硬化させていき、それが外交交渉にも影響して、相手国への不信感は増大した。ただ、共和国に比べ、帝国では相手の無礼・挑発に対しては、相応の対応を取るべきだ、という主張はあったが、積極的に軍事侵攻をすべきだという意見は殆ど出なかった。

 イーリー・ペインは、なんとかうまい具合に収拾できないかと思っていたが、一度動き出した歯車はどうにもならない。一方向へ動き出した大衆の心を方向転換させることなど、どんな政治家にも無理だっただろう。それを煽った者の予想を超えて事態は進んでしまう。

 伝統的に、経済活動を主眼に置き、経済的に相手に勝ち、経済的に相手を乗っ取り支配するのを良しとしていた共和国市民に、もっと実力的に他国を支配し、そこの市場を手に入れるべきだという、安易な考えが広がった。共和国市民にとっては「新しい」この考え方が新鮮だったのかもしれない。そして、自分の身内からもそういう意見が出てくると、イーリー・ペインは、もはや既定路線に乗るしか無くなった。

 むしろ、この動きを利用して、他家よりも早く侵攻作戦を展開し、自家に有利な結果をもたらさなければならない。それがうまく行けば、二期目も安泰、過去に例のないタイプの大統領として、歴史に名を残すことが出来る。彼はそう考えた。

 大統領自らそういう覚悟を決めると、ライバル関係にあるラシッド・ラースも負けじと強硬路線を唱え始めた。彼の思想信条から言えば、フン帝国との戦争よりも、ビジネス的に市場開拓するほうが理想だったはずだが、時流を見誤って没落するのもまた、ビジネスマンとしては恥であった。

 共和国にも戦争に異論を持つ人は大勢いたが、民衆の熱狂的動きに乗った政府を押しとどめる力など、もはやなかったのである。

 共和国政府はプロパガンダを展開した。

 フン帝国という非民主国家による横暴、不遜、愚劣の数々。これを討伐し、帝国の圧政下にある市民を解放し、彼らの正当な権利を保証し、自由を与えなければならない。

 それこそが、我が共和国に与えられた使命である。そうなれば、その結果として、広大な市場という恩恵も手に入るであろう。

 それまでにはなかった、熱く、同時に異様な内容の番組や宣伝が、メディアによって繰り返し流された。人々はそれを見て、興奮し、そして脳の片隅にわずかな不安を感じた。

 これは、進んではならない道ではないのか。

 まるで麻薬のような、最高にハイな、そして二度と後戻りすることが出来ない一線を超えてしまうのではないか。恐ろしい結果しか待っていないのではないか。

 それでも人々は、不安を振り切るように熱狂に溺れた。

 我が共和国の圧倒的な大軍勢が、田舎の専制国家などに負けるわけがない。

 グレンブル帝をはじめ、フン帝国の為政者たちがほとんど気づかないうちに、事態は恐るべき方向へと推移していった。

 そして……。

 その年、すなわち18代皇帝グレンブル在位ちょうど5年目のその日、暗黒のホライゾンの彼方に無数の光点が出現すると、それが帝国領内へと怒涛のごとく押し寄せてきた。

 メリスボーン共和国軍連合艦隊であった。

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