12代:レヴィン帝紀 -開国-

 レヴィン帝は、即位してから、父に倣うように、国際関係の拡大に務めた。

 彼の代に正式な外交関係を結んだ国は、4から18にまで増え、周辺の国はすべて外交対象国となった。ある意味ここまでたった4カ国としか外交関係がなかったことのほうが驚きだという意見も多い。

 外交関係は、事実の事後承認という要素も強かった。国際事情通であったシャリアンの代に築かれた経済関係が先にあり、貿易が盛んになり、そして外交が求められるようになって、関係が成立するのだ。条約の調印などは、形式の問題でしか無かった。

 外交関係が成立した国の中には、かつて帝位継承権を持ちながら国を追われ、平民として一生を終えたキースの亡命先であるディルボーン帝国もあった。

 キースの子孫がメディアによって探しだされて、レヴィン帝の側近などは、余計な火種になりやしないかと恐れた。

 だが、キースの子孫で、この時の当主であったエイセル・レザン・ド・フンダは、こう明言した。

「我々はすでにディルボーンの市民として、社会に受け入れられており、それなりの地位も得ております。また資産もあり、生きることに困窮してはおりません。それゆえ、いまさら縁故の乏しいフン帝国に戻るつもりは毛頭ございません」

 それを聞いたレヴィン帝は、エイセルらキースの子孫を帝国に招待した。

 そして、公式の場で、先祖に対して行った行為を謝罪し、名誉回復の措置をとり、キースの子孫一族を名誉皇族に列した。

 レヴィン帝の意向もあり、彼らには年金という形で慰謝料を払うという話も出た。

 だが、エイセルらは、丁重にそれを断った。

 理由を問われて、エイセルは答えた。

「我が祖キースは、ディルボーンに亡命した後、平民として工場で働くなどして家族を養ってきました。そして血の滲むような努力の末、最後には社会的名士として、その地位を獲得したのです。そしてキースは子や孫に対して遺言を残しました。

『自分の人生は、他人のものではない。自分で努力し、自分で自分の運命を切り開くのだ。たとえどんな理由があっても、他人の施しをおいそれと受けてはならない。他人に身を任せれば、生きるのは楽だろう。だが、そうなれば、望まぬ運命も他人任せになる。自立、自活、自尊。これをなしえて、はじめて人は人たりえるのだ』

 子孫はみな、その言葉を守って、これまで生きてまいりました。陛下のご厚意には、我々みな深く感謝しております。ですが、お気持ちだけをいただきとう存じます」

 やはり元皇族というプライドがその血に流れ続けているのだろう。その礼を失しない範囲で堂々たる態度を示したことに、むしろレヴィン帝は深く感動し、両者にまたがるキース一門の立場を生かし、ディルボーン帝国との友好関係発展のために尽くして貰いたい、と要請した。それは快く受けられたという。

 後に、ディルボーン帝国の閣僚として、フン帝国との外交関係にも関わったラティレス・フンダ外相や、優秀な外交官を何人も排出したディルボーン教育大学のリヴィンス・フンダ法学博士などはキースの子孫である。その思いは受け継がれたといえよう。

 ちなみに余談だが、キースの子孫は、フンダ家特有の長ったらしい名前を名乗らなかった。ディルボーンでの習慣に合わせたこともあるが、そのあたりでも、故郷との縁を切る覚悟、フン帝国のフンダ一族ではなく、ディルボーン帝国のフンダ一族として決意を示したのかもしれない。

 レヴィン帝は20年の在位の間に8回、外遊している。

 歴代の皇帝で、外国を訪れたのは、彼が初めてであった。

 放浪癖のあった父親の方は、帝位に就いて以降、1回も外遊しなかったが、息子のレヴィン帝は、外交関係を結んだ国々を回った。1回の外遊で複数の国を回るため、外交関係のある全ての国に訪れている。

 皇帝が外遊することは、前例がないだけに大変なことであった。そもそも、複数の星系にまたがる帝国領内を巡幸することですら、過去に殆ど例がないのである。皇帝は、帝星フンベントの、帝都の中心、帝宮の中だけで過ごすのが、ほとんど慣例であった。

 だから、外遊を行うにあたっては、初めてのことがありすぎて、人々は右往左往した。

 外遊のための専門省庁が作られ、皇帝のための専用宇宙船が作られ、それを守る専用艦隊が編成され、同行する人員を選ぶだけでも一苦労であり、その多くが宮中を職場とする専門職員であったから、一度も宇宙に出たことのないものがほとんどだった。

 また、外遊は公式行事でもあったから、相手先への対応にも苦労した。

 相手国にいきなり乗り付けるわけにも行かない。

 事前に訪問先と協議を重ね、日程を調整し、どういう歓迎行事を行い、どういう挨拶をし、また相手国の訪問する施設も選び、その間の警備の調整もし、相手方へ送るプレゼントについても考えなければならなかった。相手の習慣、言ったりしてはならないタブーの有無もある。そういったもろもろを相手と調整する担当者が、そもそも今までいなかったので、全く手探りであった。キースの子孫にも、色々アドバイスを求めたらしい。

 もちろん、外交的な意味もあるから、訪問先で、条約の1つか2つは締結しなければならない。

 移動中の皇帝一行の食事や、訪問先での食事も重要だ。相手方では良い食べ物でも、こっちではそうではないものだってあるはず。

 それらの大変さは、必ずしも悪いものではなかった。むしろ、国家挙げての大行事を、みなで取り組む、そういう熱気のようなものが生まれた。貴族だけでは到底無理なので、平民も多数採用され、抜擢されて、成功に持っていくべく仕事に励んだ。大貴族の中には、当初、こんな前代未聞なことを考えるとは、陛下にも困ったものだ、とこぼすものもいたが、貴族層でも若者には受けが良かった。立場や思想にかかわらず、年齢の若いものほど、困難な課題に対して積極的に取り組むものである。

 第1回めの外遊では、その準備だけでも、2年以上を要した。そして古くから関係の深いアズデンヌ共和国を無事訪問し終えた。その達成感は国を一体化させ、貴族も平民も感動を共有した。貴重な経験も出来た。その結果、外遊は2回め以降も行われることになったわけである。

 皇帝の外遊という、国家挙げての一大プロジェクトが出来た背景には、それだけ国内が安定していた、ということもある。この時代、内乱も、大規模な自然災害も、近隣との紛争もなかった。経済成長率は、貿易が拡大したことを受けて、内需へも循環し、上昇傾向にあった。ただ、経済活動を主に担ったのは平民であり、しかも国外関係の拡大というチャンスに乗ることが出来た者達であった。そのため、成功者とそうでないものの格差はこの時代から拡大の一途をたどることになった。貴族と平民の間に、平民富裕層が生まれたのである。それでもまだ、この時代の昂揚感と、成功者の恩恵のおこぼれをもらえる人々の多さもあって、社会的不満にはつながらなかった。

 レヴィン帝は、内政にずば抜けた政策を推進したわけではなかったが、堅実な政策を着実にこなし、安定した社会を作ったこと自体立派なことだといえる。その結果が、外遊と言う形で結実したという意味では、レヴィン帝は後世、高く評価されている。それは、平民出身だった母親の存在も大きかっただろう。

 ところで、レヴィン帝の皇后は二人いた。

 一人目は、メアリー・サンブルーラ・メディクス・レディ・ヴァルオーネ・リリス・レイス・ド・フンダといい、ヴァルオーヌ伯爵家の娘であった。メアリーは、レヴィンが皇太子時代に結婚した相手であり、伯爵家の出身という点で、平民出身だったレザリナほど極端ではないが、あまり身分は高くない。しかしレザリナの身分の低さもあってか、問題にはならなかった。メアリーは、シャリアン帝と皇后レザリナが、皇族や貴族らから情報を集めて候補に選び、レヴィンと見合わせてみて、その結果皇太子妃として選ばれた。レヴィンもかなり気に入っていたらしく、結婚には乗り気だったが、メアリー自身は乗り気ではなかったらしい。ただ、好きな男がいたとか言うことではなく、レヴィン皇太子に魅力を感じなかったのだ。

 それでも貴族の娘として、皇太子との結婚は悪い話ではない。彼女は黙って従った。父親のヴァルオーヌ伯爵は侯爵となった。

 皇太子妃となったメアリーだったが、夫との仲はそれほど良くなかった。険悪だったわけではなく、冷めた感じであったらしい。レヴィンは彼女の気を引こうと、こまめにプレゼントしたり、彼女の要望にできるだけ応えようとしたが、メアリーは夫に何かしらの要求をすることも少なく、夫婦はだんだんすれ違いが大きくなっていった。夜の営みも、ほぼなくなり、宮中内別居のような状態になった。レヴィンはまもなく皇帝となり、メアリーは皇后になったが、それで態度が変わるわけでもなく、夫婦仲は冷めたままだった。

 メアリーは決して悪態をついたり、問題行動を引き起こしたりはしていない。だが、ろくに返事もしないので、レヴィンは苛立って声を荒げることもあった。それでも彼女は静かな口調でひとこと、「申し訳ございません」としか言わない。まだしも言い争ってくれたほうがマシだ、とすらレヴィンは思うようになった。

 メアリーは、レザリナに対しても、丁寧な態度で接した。しかしあくまで礼儀上のものであった。レザリナからすると心を開いてくれたようには感じられなかった。メアリーは夫との関係が冷めても、これ幸いという感じで、趣味に日々を過ごすようになった。

 レザリナはこの件に、かなり悩んだらしい。最終的には夫婦の問題であるから、下手な口出しは逆効果になりかねない。本人たちに任せるしか無い。しかし一方で、子供が出来ないと、帝位継承にも関わってくる。となると、道は限られてくる。皇后を廃して別の女性を皇后に立てるか、側室を置くか、養子を取るか、である。安定した帝位継承を考えると、養子は避けたかった。

 レザリナは庶民の出身だけに、形式的な結婚や、後継者を産むためだけの側室制度には良い印象を持っていなかった。やはり恋愛しての結婚に至るのが当然というもの。夫のシャリアン帝はそれなりに女好きであったが、結婚後、側室は置かなかった。レザリナが後継者を産んだのもあるが、シャリアンがレザリナにかなり惚れ込んでいたからもある。そもそもレザリナを口説いたのはシャリアンであり、レザリナも口説かれてその気になってから関係を持ったので、彼女にしてみれば、結婚は当然の結果であった。皇后という地位は、結果にくっついてきただけのことである。

 しかし、息子の場合、帝位継承問題があるので、夫婦仲が戻らないようであれば、側室を置くしかなかった。

 レザリナが、シャリアンとも相談して、側室候補を探し始めて1年ほどした時、彼女の元へ、息子がやってきた。

「母上、ご機嫌麗しゅうございます」

 レザリナは、不審な顔をした。口調とは裏腹に、息子は浮かぬ顔をしていたからだ。

「どうかしたのですか?」

「実は母上……、その、ご相談がありまして」

「聞きましょう。母に解決できることですか?」

「はい。おそらくは……」

 なんだか皇帝らしからぬ威厳のなさだが、レヴィン帝はどうにも、この母親に頭が上がらないのである。それでも、逡巡した挙句、彼は話し始めた。

「母上。実は……、私は結婚したい女性がおります」

 レザリナは一瞬、息子が何を言ったのか、戸惑った。

「なんとおっしゃいました?」

「結婚です。結婚したい女性がいるのです」

「何を言っているのです。あなたには皇后がいるではありませんか」

「わかっております。ですが、皇后とはもう、心が通じてはおりません」

「それはそうですが……、それで、つまりあなたは側室に迎えたい女性がいるというのですか」

「はい。あ、いえ、正確には側室ではなく、皇后を変えたいと思っているのです」

 レザリナは眉をひそめた。

 正妻を交代する、などというのは、あまりいい感じはしない。が、それはそれとして、

「その女性を皇后に迎えたい、と、あなたは思っているのですか」

「……はい」

「その女性とは、心が通じているというのですか」

「はい。その通りです、母上」

 まさかこういう話が息子の方から来るとは思ってもいなかったが、息子が気に入っているというのであれば是非もない。

「それで、そのお相手は、どなたなのです」

「それが……」

 皇帝は口ごもった。

「なんです? 私の知っているものなのですか?」

「はい」

「ほう。どなたですか」

「それが……、カザリンなのです」

「……」

 レザリナは、一瞬、そのままの表情で沈黙した。

 そして、目を丸くして、

「カザリンって、あのカザリンなの??」

 と皇太后らしくない口調で大声を出した。地が出た、という感じだ。

「はい……母上」

「ありゃー」

 とレザリナは変な声を出した。なんかもう、一気に庶民体質に戻ってしまった。

 レザリナが驚いた、カザリンという女性。一体何者か。

 カザリン・ナヴロス。

 ナヴロス伯爵家の娘である。宮中に仕えるれっきとした貴族令嬢だ。

 だが、

 貴族らしからぬ女性だった。

 見た目は、まあ、令嬢っぽい。顔立ちも悪くはない。スタイルも良く、腰付きもしっかりしている。髪型はレザリナに似て、かなりの癖っ毛である。肩下くらいまである癖っ毛をそのまま手入れもしないので、ボワボワになっている。だが、それが問題なのではない。

 問題は、その性格だった。

 明け透けのない性格、といえば、まだ聞こえがいいだろうか。

 はっきり言えば、露骨な性格、であった。

 なにが露骨かといえば、

 思っていることをズバズバいう。相手が皇帝だろうと躊躇も遠慮もしない。嫌いな相手のことは面と向かって嫌いという。

 自分の欲についてもあけっぴろげだ。欲しいものがあれば欲しいという。変に気取って隠したりはしない。結構欲深でもある。

 また、宮中内を、大股でズカズカ歩き、腰に手を当て仁王立ち、椅子にもどかっと座る。

 貴族のおしとやかさ、と言うのからは、数百光年ほど離れている感じだ。

 その点も、レザリナと似ている。

 いや、実はレザリナとは、仲は悪くないのだ。

 カザリンは、皇太后であるレザリナに対しても、平然と口を利く。レザリナが平民出なのを軽蔑しているのではなく、むしろ遠慮なく親しみを表していると言ってもいい。

 若い女官たちからも親しまれている。姉御肌な感じだからだろう。実際面倒見もいい。

 が、

「ああも、露骨な性格で、礼儀作法も無い女性を皇后に立てていいのかしら」

 レザリナは戸惑った。

「ま、私が言うのもなんだけど……」

 欲深というのも、微妙だった。

 素直といえば素直だろう。変に陰に籠っていない。だが立場が立場である。皇后は謙虚であるべきだ。

「それでわからないんだけど、仮に彼女を迎えるとして、側室じゃダメなの?」

「いや、それが……」

「ん? なにかあるの?」

「カザリンが、側室ならお断りします、っていうんです」

「……皇后じゃなきゃ嫌だと?」

 皇帝はうなずいた。レザリナはやや呆れた顔で、

「ま、あの子ならいいそうね」

「はい……」

 はあ、とレザリナとレヴィンの母子は同時にため息をついた。

「ちょっと、あなたまでため息ついてどうするのです」

「すみません、母上」

「さて、困りましたわね」

 レザリナは、夫シャリアンにも相談したが、シャリアンは困惑と苦笑をないまぜにしたような顔でしばらく考えた挙句、

「レザリナ、あなたに任せよう」

「……あなた、お逃げあそばすおつもりですか?」

「……許せ。こういうことは苦手でね」

「もう……男の方は頼りになりませんこと」

 シャリアンとしては、かつてレザリナを皇后に選んで世の中を驚かせた過去がある以上、何も言えないのである。

 そこでレザリナは、変に裏で動くよりも、当事者同士で決めちゃったほうがすっきりする、と思ったらしい。

 それで、自分と、現皇后のメアリーと、カザリンの3人で御茶会を名目にして話し合いを持った。肝心のレヴィン帝すら呼ばなかった。

 その結果、次のことが決まった。


 メアリーは皇后を退任する。

 そのあと、カザリンが皇后に立てられる。

 メアリーは終生年金と荘園を下賜され、住まいは皇帝の別荘の一つを譲り受ける。

 メアリーは准后待遇を認められ、以後も宮中に来ても構わず、皇后に准じて扱われる。

 メアリーの実家は引き続き、侯爵位とする。

 カザリンは後妻として入る上に、今回の件があるため、実家は伯爵位のままとする。

 以上の件について、皇帝は了承済みとし、レザリナが保証人となる。


 結果を聞いたレヴィン帝はホッとした様子だった。

 貴族らの間では、この一件は不評だった。

 皇帝の意もさることながら、こんな形で女性がでしゃばってくるのはどうか、というのである。多分に、そういうことなら、我が娘を貰ってくれたほうが、などと考えた貴族も大勢いたのだろう。

 しかし決まったことはどうしようもない。本人らがそれでいいというのである。

 メアリーはむしろ、やっと解放されると言わんばかりの様子で、嬉しそうに皇后を退任したので、レヴィンの心境はかなり複雑だった。

 こうしてカザリンは、正式に皇后となり、カザリン・スレヴンスル・グリーナ・レディ・ナヴローサ・グレタ・レリオン・ド・フンダと言う名をもらった。

 皇后カザリンは、皇帝と仲睦まじかったようで、4男1女を授かっている。

 彼女は結婚してまもなく、皇帝に対し、次のことを求めた。

 側室は絶対に置かない。

 帝位は息子に継がせる。

 私専用の離宮を建てる。

 実家の爵位は伯爵で妥協するが、新たに荘園を下賜する。

 自分の弟を国家のいずれかの要職につける。

 私利私欲ではあろうが、この辺りは当然といえば当然の要求だろう。彼女の性格を考えれば、これくらいのことは言いそうだ、と皇帝も思っていた。

 だが、次のことに関しては、皇帝も予想していなかった。


 フン帝国を銀河最大の国家にする。


「皇后よ、それは一体どういう意味だ?」

「私はですね、陛下。ちまちまとした国家の皇后など望みません。なるなら、銀河人類史上に前例のない超大国の皇后となりたいのです」

「前例のない国家と……」

「そうです、陛下」

「我がフン帝国をか?」

「その通りです」

「我が帝国は、そんなにちまちまとしているか」

「しております!」

「そ、そうか……。皇后は気宇壮大だな」

 レヴィンとしては、これでも5つの星系を支配する恒星間国家なのだが、という気持ちだったが、カザリンの気質は、皇帝を遥かに凌駕していたようだ。もっとも、非現実的な妄想の類、といえなくもない。

 皇帝が外交関係の拡大だけでなく、外遊を繰り返した背景には、皇后の勢いに押されたところもあるだろう。

 カザリンがどこまで本気だったかはわからないが、その気宇に比べれば、現実の成果はささやかだったといえる。

 それでも、帝国の方針は、12代レヴィン帝時代に、外へと向かって動き出した。実のところ、カザリンの思いは、次の13代皇帝セティン・ベイセルド・ベラーヌ・カヴァーン・ロード・ハルセリオン・アドヴィンスト・サダレナ・ド・フンダの代になって大きく結実していくことになる。

 地域国家だったフン帝国が、ついに、銀河にその影響力を知らしめるようになっていくからである。

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