短編「向こう側へ」


私は時間が嫌いだ。なんせ、私のことを置いていってしまうから。

みんなが併走している時間にさえも追いつけない。

私なんていない人。悲しみも喜びも、流れる時間に攫われてゆく。

ねえ、答えてよ。なんで私を置いていくの?

訪ねた問いに答えなど無く。時間は今も流れ続ける。

私は先ゆく背中を見つめる。それさえも、向こう側の話であった。


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