三人目のリカちゃん
――あれ、これは?
僕の問い掛けに彼女ははにかんだ風に笑う。
――それ、三歳のリカちゃん。
苺をイメージしたドールハウスの中に立つ、これもまた苺を象った帽子に赤と白のチェックワンピースを着た、愛らしい幼女人形。
左右にはそれぞれピンクと水色のドレスを纏った幼女人形が微笑んでいた。
――これは三つ子なの?
三体とも同じくらいの背丈で似通った面影をしている。
――ピンクと水色はリカちゃんの双子の妹で、苺帽子のは三歳の頃のリカちゃんなの。
彼女の白い手が苺帽子の人形を取る。
――偶然、お店で見て買っちゃった。
栗色の髪をショートにした彼女は、普段は「リカちゃん」よりむしろボーイフレンド人形じみた「美少年」に見える。
――小さい頃はお姉ちゃんたちのリカちゃん人形がうちにたくさんあったから自分のが欲しいと言えなかったの。
――そうなんだ。
離婚して苦労したお母さんに楽をさせたいから奨学金で医大に入ったとは前に聞いた。
お姉さん二人は双子でもう独立しているとしか彼女は語っていない。
――この小さいリカちゃんが、やっぱり一番可愛いな。
抱えた白い手ごと僕は苺帽子を撫でる。(了)
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