イレイサー

 俺は、俺様は、ここいらの中じゃ一番の実力者だ!

 ゆるぎない殲滅力を打ち出す完璧なボディ! 毎日俺を見る熱い視線を幾度も感じるんだぜ。

 あぁ、早く実戦で活躍したいぞ。

 ……お? 俺を必要とする者が現れたか。そうこなくちゃな。

 主の名は、ケイタか。よし、俺は今日から主の敵を消す!


 おいこら、やめろ! 俺の体を守る鎧を剥がすな!

 ちょ、体に落書きとは何事か! 殲滅力が激減するではないか! いくら主君といえど……、って、いてぇ! ぶん投げるなよっ。俺の戦法はいらないものの抹消であって、直接打撃じゃない! しかも机の上での同胞とのバトルでもない! でかいくせにすぐに戦場から落ちるとか言うなぁっ。それは主の腕が悪いからであってだな……。

 お、おいおい、主君、なんだその刃物は? 改造とか言って、俺を切るのか? やめろっ!

 うわぁぁああぁぁっ!!


「ちょっと圭太! 消しゴムをそんなふうにしちゃダメでしょ。大事に扱いなさい」

「はあぁい」

「まったく。良く消えるいい消しゴムだからって、いいのを買ってあげたのに、落書きしたり切ったりしちゃ意味ないでしょ」

「ごめんなさぁい」


 ……助かった……。

 主君より更にえらいのは母君。これ重要、ってところだな。

 さぁケイタ様よ、これからも俺を存分に使ってくれ。本来の手法で、な。


(了)



 思いつき掌編

 小学生が消しゴムバトルをしているのをよく見かけるので……。

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