子育て中の友人と打ち明け話


「え、ミオリって、ミオリさんのこと?」


「うん…まぁ、そう…だけど、何?」



 イスミは、湯気の上がるナポリタンスパゲティを前に、フォーク一本でどこまで一口を大きく出来るか、考えている。口の中にあふれてきた唾を飲み込み、オレンジジュースを、一口代わりに含んだ。はす向かいに座ったユミは、ベビーシートに座った隣の長女の口に、よく冷ましたコーンポタージュを運んでいる。



「いやまさか、そういう相手だとは思わなかった、っていうか」



ユミが言葉を選んで黙ったので、イスミも俯いて待つ。


 辛うじてイスミは財布を携帯していたが、今日は、ミオリのことばかり気になって、化粧道具一つ、持って出なかった。それを思い出したのは、寝起きのぼんやりとした状態のまま、店に入ってからのことだったが、車に戻りたがるイスミを、ユミは頑として引っ張り、店に連れて入った。


酷い目元は、ユミの手際で見事に隠蔽され、それを見たイスミは、心なしか気を取り直した。ゴロゴロとベビーカーで先導するユミの後ろについて、言われるがまま席に着き、食事に至っている。イスミは、重い両目をしばたかせると、まるで珍しいものを見るように、ユミの格好を観察する。


ユミの茶髪は、若干、雑なようにもみえるポニーテールに纏められ、頭頂の水色のシュシュが、爽やかなアクセントになっている。トップスは一枚だけだが、軽やかなシフォンの半袖シャツは、淡い、桜色だった。色合わせは十分若々しいが、袖口から覗く二の腕もまた、、主婦らしい生活感が滲んで見えるのも、眩しい限りだ。


かたやイスミは、数年前に流行った柄Tシャツに、いつものジーンズという格好で味気ない。もとい、外出に間に合えばいいだけの格好で、家を出たのだ。後先考えずというより、服を選ぶという習慣が、今日だけすっぽり抜け落ちていたらしい。


 

溜息を漏らして、曲げていた首を伸ばすと、イスミは食事に意識を戻した。


注文した料理は、すでに全員分、到着済みで、ユミは、自分の皿のハンバーグをつまみつつ、長女が伸ばした手に、子ども用のフォークを握らせ、どうやってポテトフライを小さく切るか、教えていた。イスミはその光景を見ながら、自分の子どもの頃を思い出す。


フォークやスプーンを見て、大人の自分が今、その使い方を悩むことは無い。けれどそれは幼い頃に、身近な大人が、すべて教えてくれたからなのである。自分の場合は、間違いないく母親であり、"親"の役割とは、図らずも大きいものだと、改めて感嘆する。


目の前の友人は、至極それを当然のようにこなして、二人目の子どもの面倒を見ている。まるで違う人生だなと、イスミは思う。


手の中で回るフォークと、戯れるスパゲティの渦に、自分がひどく子どもの様な気がして、イスミは手を止めた。小さく掬って、ようやく最初の一口を、口に運ぶ。



「サキコの姉貴じゃなかったんだね、ミオリさんって」



ようやく頬張ったスパゲティのトマトソースは、とびきり甘く感じた。



「…んぐ。あね…き?」


ユミの話に対して、浮かんだ疑問符はそこそこに、イスミは、たまらずフォークを立てて、くるくると回転させる。皿の端から、スパゲティを次々と巻き上げるては、躊躇なく、空っぽの胃に納めていく。そんなイスミの様子に安心したユミは、自分の記憶を探るように、少しずつ話を続けた。



「いや、サキコがしょっちゅう、ミオリが…って話をしてるし、てっきりシスコンだと思ってた。で、さ、大学の時、一度会って、話したことあるんだよ。たしか…学祭の時だったよ。そうそう! あのときの印象が、衝撃的っていうか、なんかヤバい人いる、みたいな感じだったの、覚えてるし」


「がくさい?」



短大の一年次、イスミとユミは、同じサークルで学祭に参加していた。二年目は、辞退したので、ユミが学祭と言えば、そのときの一回のことだ。



イスミは、高校を卒業してから一年間、アルバイトで学費を貯め、奨学金を足して入学金を作り、女子短大へ進学した。教員の資格を取るなら、4年制の方がいいとミオリに言われたが、希望は無かったので、それでよかった。


イスミは、またしてもミオリのことを思い出し、言葉に生らない感情を飲み込む。



「学祭と言えば、赤いスポーツカーが乗り付けて、芸能人張りの美形カップルが来たとか、騒ぎになったじゃん。あれ、サキコは知らなかった?」


「いや…知らない」



イスミは首を振り、ユミは構わず続ける。



「軽く騒ぎになって、そのカップルの一人が、うちの屋台にも来てさ」


「そうなの?」



入って早々、趣味が模型作りという理由だけで、イスミは美術サークルに誘われ、短い間だったが、活動に参加していた。活動と言っても、授業の空き時間を利用して、好きに工作や絵描きをやるぐらいで、展示会のようなものは、個人で勝手に探して応募するという、緩い集まりだった。


そんな人間が集まって、年に一度のお祭りに何をやったかといえば、ジャンル違いも甚だしい、”焼きそばの屋台”だった。イスミのように、高校時代から、アルバイトで調理の経験がある仲間が、たまたま多かったせいもある。


検査や器材の借り出し、具材の注文まではトントン拍子で当日を迎えたのだが、まさか、そこまで知名度のある大学でもないからと、来場者の規模を小さく見積もり過ぎていた。



「まぁ、そんな騒ぎもどこへやらの、すごい数の客だったよね、圧死するかと思った」


「うん」



 予想外の客入りと野菜切れのアクシデントに忙殺され、その日の午後は、永遠に続くのではないかと思うほど、異様な熱気に包まれていた。9月の、まだ残暑厳しい金曜日だった。


宣伝係で学内を歩き回っていたユミとは違い、店番だったイスミは、ひたすらソースを振りかけ、茶色い麺をかき混ぜていたのだろうが、そんな汗だくの視界でも、ミオリを見れば、きっとイスミは覚えていたはずだ。


 まだ初々しい、二十歳の頃である。ミオリはミオリで、四年制の国立大に入り、語学と法律の勉強で忙しくしていた。短大時代の2年間は、高校まで一緒だったミオリと離れて、違う環境を生きるのに、夢中だったと思う。ミオリに会う機会もずっと少なかった頃だ。。



「わたし、あまり忙しくて覚えてないんだけど、ミオリって来てたの?」



そう尋ねつつ、皿の上で、てかてかと光るソーセージの切れ端を寄せると、イスミは満足げに、最後の一口を咀嚼した。そして、同じタイミングで飲み終えたオレンジジュースのグラスを脇へよけると、ドリンクバーで調達しておいた、アイスコーヒーに口を付ける。


ユミが答える。



「来てた来てた。だから、”赤いスポーツカーの女”よ、ミオリさんって。私、あの時初めて、あの人に会ったんだもん」


 ユミの目が、きらきらと昔話に輝きだすのを見ながら、イスミは記憶を必死に探る。しかし、ミオリが赤い車に乗っていたことなど、知らない。就職してから買った車も、確か黒かった気がする。ユミは言う。



「バザーに出品すると貰える券が、確かあったじゃん?それを、2…30枚くらい持ってて、使い方が分からないから、教えてくれって言われて、私に。でも、明らかに大学関係者、っていう風でも無かったから、学生のご家族ですかーなんて話をして。それで、サキコの知り合いだとかいうから、てっきり」


「いや、知らないよ。会った記憶ないもん」



イライラとし出したイスミは、腹いせのように、パフェを注文した。自分が会えていないミオリにユミが会ったことが、今更のように不満だった。



「いや、それはサキコが、あんまり忙しそうだったから、見てるだけでいいとか言って。遠くからしばらくあんたの様子見て、帰ったから。それでそのとき、確か『イスミがいつもお世話になってるようで、宜しく』みたいなことを言われたんで、あぁ、歳の離れたお姉さんかな、みたいな。でも、違ったんだ」


「違うよ。歳だって同い年だもん。なんでそこで、になるわけ?」



家族なわけがない。たしかに、それくらい長い付き合いかもしれないが、親友であっても、姉では決してない。


「だって、あんたの話をずっと聞いてた限り、違和感なかったし」


ユミはそう言って、「ねー」と、隣の娘に同意を求めるように、小首を傾げて見せる。また、そんな母親をじっと見つめ返しながら、黙々とバナナを頬張る娘の頬を、ユミは軽くつついて、幸せそうな笑みを浮かべた。



「いやぁ、声を掛けてきたときも、お祭りに来たっていうテンションでもないし。妙に落ち着いてて、暑い日だったのに、汗とか、かいてないイメージっていうの? 黒のキャミソールか、ノースリーブで、『胸でかっ、腕細っ』って思ったわ。

 

 最初サングラスしてたし、来てる服もブランドで高そうだったし、芸能人ぽいような、普通じゃない感じだったから、結構目立ってた。でもぎりぎり、サキコの身内って言われれば、『お姉さまですか!』、的な」


「なにそれ」



そう言いつつイスミは、やってきた苺チョコレートパフェの大きさに、少し尻込みして、仰け反る。



「でも、フラれたんだ。だったら長いよね。え、10年以上?」



イスミが答えあぐねている内に、ユミが、横からパフェの苺を横取りし、娘に食べさせる。イスミは気にせず、スプーンの手を休めない。第一、一人で食べられる量じゃない。


「まぁ、うん…フラれたというか、勝手に失恋、なんだけど」



チョコレート掛けの白いクリームを掬い取り、口に入れる。やっぱり、外で食べると外の味がする。ミオリの手作りに慣れてしまって、舌が肥えたせいだ。



「結婚するんでしょ。え、違うの?」



ユミが拾ったイスミの話を、イスミ自身が訂正する。


「ちがう。結婚は断るの。無理やり婚約者とかって、決められてるだけで、ミオリはいつも、そんな気なんて無いし。それとこれとは違うの。OK?」



ユミは頭を掻いて、分からないという顔をする。


「ちょっと意味わかんないそれ。だから、前連絡しないで家に押し掛けたら、知らない男がいて、手作りのカレー、食べてたんでしょ。”押し付けられた”、とか言訳で、ちゃんと家に男呼んでんじゃん。ダメダメ、バイセクシャルだったんだって、ミオリさんは」


「バイって…んなわけない」



かといって、そう確信できる証拠があるわけでもない。とにかく違う、と思うだけだ。



「いやー、人間分かんないよ。血のつながってる家族だって、10年越しで嘘ついたり、出来るからね。私だってついこの前、母親に浮気してましたーって、はっちゃけられて。で、『もう浮気相手とは別れたから、心配しないで』って。


 正直、アホじゃない?なんで、いまさら言うかなーって。『隠すなら死ぬまで隠し通せよ』って思うし、なに勝手にラクになろうとしてんの、みたいな。まぁ、歳とって来て、怪我とかしたら、気が弱くなったのかもしれないけど。あ、ごめん、家のはなし」


「いや、いいけど。そう…なんか、いろいろ大変だね」


アイスティーをストローで吸いながら、イスミはそう言って、神妙な顔をする。

なんだか、ミオリの秘密を悪い意味で肯定された気がする。ユミは、イスミの相槌にうんうんと頷いて続ける。


「ホントー。とし食って、これから娘に厄介になるかも、って思ったら、突然罪悪感でも、わいたんじゃない?っていうタイミングだったし、それって、腹立つくらいゲンキンだよね。自分の母親だけど、マジで理解できないし」


「まぁ…うん…」


イスミは幼い頃、身体の弱い父親を病気で失って以来、母親が一度たりとも、再婚を口にしなかったことを、改めて思い出した。


"必要ない"と、そんな言い方をしていたが、本当は、どうだったのだろう。そんな母も失って、イスミは、生きている親の文句一つ、目の前の友人に共感できないことに気付く。


 ぼうっとし出したイスミをよそに、ユミは収まらない様子で言葉を継いだ。


「私も子どもが二人いるけど、二人目の男の面倒なんて、頼まれても見る暇ないから! 絶対、昔より母親って、忙しくなってるよ。いま花子、あぁ、娘ね。花子が幼稚園行けるくらいになったら、私も仕事しないといけない。そうじゃないと、生きてけない。ローンと光熱費、食費を計算しただけでも、すでに家計が危ういんだぜ。それで親の介護とか、仕事増えたら、もう正直言って!」



イスミは、クリームチーズの味がするアイスの層を堪能しながら、ユミの家庭事情を整理する。


「でも、この前の話だと、車と家の頭金、お母さんが出してくれたんだよね」


ユミは、『あぁ』というように笑ったが、すぐさまムスッとした様子で、こう切り返した。


「世代間格差っていうの? まだ親父が働いてて、かなり貯めこんでるからさ。うちの旦那なんか、残業きついのに給料あがらないとか、仕事辞めたいとか言ってるし、色々と不安で。ほんと何でかねー。頼らなくていいなら、そうしたいけど、だって、金出してるんだから口出ししてもいいよねーみたいな、母親がマジで、そういう顔して来るから。でも、全部親父の金じゃん、みたいな」


「あぁ、お父さん、知らないのね…」


ユミは難しい顔をして、下唇をいじる。


「そうなんだよねー、私もいい迷惑なわけで。だって、親父に黙っとくのって、罪悪感あるじゃん? でも、言えば終わりでしょ。どうしろっていう」


「うんうん」


普通に結婚して、家族がいるというのも、大変なことなのだ。


月並みな感想かもしれないが、イスミにはそれだけ、新鮮に感じた。自分のことではない、誰かの話。イスミと違う価値観で、イスミと異なる人生を送っている、友人の苦労話。聞いていると、自分の苦労が、それほど大きくない気もしてきて、またそれほど、不幸な生活でもない気がしてくる。


ホットコーヒーのカップを触りつつ、言いたいことは言えたとばかりに、ユミは話を変える。



「そうかー、で、サキコは、おひとり様か」


「あ…あぁ、まぁね」


パフェの最後の、カリカリとしたフレークを嚙み砕きながら、ミオリとはまだ、友達でいられるだろうかと思案する。女々しい話だが、週末の予定を尋ねるいつものメールや電話を、イスミがしなくなったら、ミオリは、少しでも寂しいと思い、何かあったと、気付いてくれるだろうか。


ユミは、イスミの表情を見て、首を小さく振る。


「ダメダメ、長すぎたんだって。あたま切り替えるの、理屈じゃなくて難しいだろうけど、変な期待はしないほうが、身のためじゃない? それに、弁護士でしょ、ミオリさんって。すごいんだろうし、頭もいいんだろうけど、一度こじれたら、サキコじゃ所詮、敵わないって」


イスミは頷きかけたが、おそろしい誤解が生じていると気付く。


パフェを完食し、はぁと、満腹の吐息をもらしながらソファに背中を預けると、自身の情況を説明し直す。


「別に、ミオリとは付き合ってないって。。ミオリとは、どこまいっても”親友”どまり。そして、そのままドーンと、片思いが、片想いで終わりましたっていう」


「はぁ?」


ユミは、ぼりぼりと自分のブロッコリーを頬張りながら、怒ったように切り返す。


「なんでじゃあ、失恋なのよ。いったいどこからの失恋よ?付き合ってないんでしょ、始まってないもんが、なんで終わるのよ」


「いや…だから、ミオリが…」


イスミは深く、ソファに沈み込むように腰を落ち着ける。


「私が傍にいると、”上手くいかない”って言ったから。私に帰って欲しそうだったから。すごく、迷惑そうだったから…」



何より思い出したくないのは、ミオリが、イスミに対して頭を下げた、あの瞬間だった。何がいけないのか、と問われれば、うまく言えない。ただ、あまりにもビジネスライクな、どこか、対等では無い関係のようだった。きっぱりと、二人の間に線を引かれたようで、怖かった。


 自分の知らない顔をして、知らない人間と会っている、ミオリというひとを、どこまで信じればいいのか。どう信じて、付きあって行けばいいのか、途端に分からなくなったのだ。


ユミは、イスミの答えに納得していない様子だったが、それ以上責めても仕方がないと思ったのか、こう言葉を返した。


「サキコ、恋は終わるものだよ。現実を見て、愛に変われない恋は、みんな終わる。ごめんね、しんどいこと言うようだけど、これでも結婚して、母親もやってる女だから、自分の思ったことを言ってる。


 相手が女だろうと、男だろうと、恋愛は皆等しく、非情なものだよ。サキコがミオリさんと、友達でいいっていうなら、恋は終わったんだろうし、違うと思っても、向こうが、あんたをどう思ってるか分かんないんじゃ、どこに進むの? どう、変われると思うの?」


「…うん、そうだよね、ユミの言うことは…」


辛辣なことをユミが言うのは、いわばショック療法なのだと、頭では分かっている。


それでも、その”優しさ”が、今はまだ、当然受け止め切れない。



「ごめん、ユミ。ありがとう…けど今はまだ…」



「わかった、こちらこそ御免。あんまりサキコが、ふにゃふにゃしてるから、ちょっと、イラっと来たんだ。もう少し、クールじゃない? 普段のあんたって。はっきり自分の意見を言うし、全般、好きな女子に、そうと知れずに妬まれても、結構飄々ひょうひょうとしてて。三十過ぎても、変わらずお人好しな感じで」



ユミが、イスミをどう見ているのか、そう言えばあまり、聞いたことが無かったと、イスミは思う。


「“お人好し”って、なんだそれ。死語じゃない?」


「違うよー、まだまだ使えます~」



ようやく自分のハンバーグを食べ終え、娘のプレートの残りも、きれいにさらえたユミは、「よしっ」と言って、イスミの方を見る。



「そういうことで、五月の連休。別荘地で仕事してくれる人、探してます」


「?」


イスミが、沈んでいた身体をごそごそと持ち上げて、身を乗り出すと、ユミは携帯をタップして、何やらメールを見せてくれる。


「あぁ、ヨリコの民宿か」


 学生時代、会うと、いつも楽しそうに大好きなアニメや漫画の話をしてくれたヨリコだったが、誰より早く、家業を継いで働き始めたのは、彼女だった。ユミは、補足するように言った。


「ヨリコは、別にあんたと同種じゃないけど、非婚派でしょ? 似たような女集めて、逆に、いつもより忙しい連休を、面白く過ごしたいらしい。サキコは、結構仲がいい方だったと思うけど」


「あぁ、まぁね」


イスミの女友達に対する距離感は、その実、かなりである。イスミも、相手に多少の遠慮をするし、友人たちも、それなりに配慮をする。


「事情が事情なら、きっと構わんよ。それとなく、話はしといてやるから。それにもう、二十代じゃあるまいし、何が起こっても、責任は自分でとれ、ってね」


「なんですかーそれ」


笑えないなぁと思いつつも、既に少し、笑えるようになっている。



「じゃ、そういうことで。昼食は終わり。連休は、忘れて遊んでおいて」


「仕事しておいで、の間違いじゃない?」


「大丈夫、大丈夫。人が集まれば、多少は楽だよ」



ユミは娘を抱え、イスミはユミの鞄を持って、立ち上がる。


『それでも明日はやってくる』とは、よく言ったもので、イスミは、ミオリのことを、なんとか意識の端に留め置くことに、成功しつつある。時間はかかるだろう。でも、いつか、いますぐでなくても、いい解決方法が見つかるはずだと、イスミは自分に言い聞かせた。


ミオリとの関係。その望ましい関係を、これから考えていこう。



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