忠告する者

「ねえ? しずく様? あたいは、しずく様に殺されたのです。予言ではなく、呪術で。でも、約束は守ったのですよ。コスプレも、メイドも、マン喫も、守ったつもりなのに、どうしてなのですかね? あたいの命。返してくれませんか? 出来る筈ないですよね。だったら罪の代償として、罰を与えさせて頂きます。連れてってあげますよ。あたいの居る世界へ。ただ、こちらへ来ても、あの約束だけは守れません。友達だけにはなれません……」



「待って、くうか!」



 パッと目が覚めると、そこは校舎の屋上だった。

 どうやら、私は昼休みの放課後、セイラを呼び出し、中々来なかったので、そのまま昼寝をしていたらしい。もちろん、くうかの話しをするためであるが、夢枕に立って私に何かを訴えて来ているのは、尋常じゃない心境にならざるを得えない。



 屋上は普段施錠されており、開閉の自由は効かないのだが、稀に掃除のオバさんが施錠し忘れている時がある。たまたま、それが今日運良く開放されていた。



 すると、セイラが肩で風を切って、やって来た。私の前で立ち止まると、いつものように腕組をしながら、



「しずく! 何?」



 と、一風堂々と私を見下したのだった。

 私はそれでも、即座に昨日の出来事を細かく話し説明し始めた。



「そんなの知ってるわよ。だから?」



 拍子抜けである。

 もちろん、セイラは知っている。

 それなのに、どうしてそんなに平静を装っていられるのだ。



 ここで私に対するセイラの仕打ちを教えておこう。

 その方法は、わざわざ私に暴言を吐かせて、敵となる私を作り出し、そこへ恰も自分が正義の味方のように戒めにやってくる。つまり、美味しいとこだけ持って行って、自身の人気を集め、そうやって指揮を高めようとしているのだ。



 セイラが強いと言われているのは、生徒をマインドコントロールするのが上手なのだ。今では約八割の生徒がセイラの信者と化している。



「しずく! あんた、その先に何があるのか? 気になっているの?」

「もちろんよ」

「そう……でも、答えないから」



 と、言って、そっぽを向いているセイラ。

 それでも、私は問い詰める。

 絶対にくうかの仇を取りたいから。



「セイラ! ホントは何か知ってるんじゃないの? くうかの仇を私は取りたいのよ。だから、何でもいいから教えて」



 実は、私はセイラが嘘を吐いているのではないか? と疑っていた。その表情を読んで、そう思ったのだ。



 セイラは隠している。

 私の知らない何かを。



「ふん。あんたみたいなのに教えることなんて何もありゃしないのよ。これ以上、あたし達のテリトリーに踏み込んで来ないでよ。あんたはパシリ扱いされてりゃ、それでいいのよ」

「教えてよ! くうかは死んだのよ! 遺体まで見つかってないのよ。可哀相じゃない。誰にも知られることなく暗い中、くうかは今もずっと一人ぼっちなのよ?」



 さすがにセイラは、私の勢いに呑まれたみたいだった。

 セイラはタメ息を吐いて、私を見詰めた。



 そうして、セイラは、



「仕方ないから、これだけは言っといてあげるけど……くうかの遺体? そんなものはないわよ?」

「えっ?」

「くうかは生きているわ!」



 私は狐にでも摘まれた気持ちになった。

 私にセイラは、くうかの遺体はないと言ったのだ。

 そんなものはないと。



「だから、あんたはこれ以上関わってくるんじゃないって言ってるでしょ。あたしも、これ以上話してしまうと大変なことになってしまうから、これぐらいにしとくわね。あたしは忠告しただけだから。じゃあ、あたし帰るから」

「あっ、待って!」



 セイラはその場から逃げるように去って行った。

 何がどうなっているのか?



 さっぱり、わからない。

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