第5話

 「着いたー!!!」


 「長時間、バスに揺られて酔ってる奴は居ないか?

まあ、皆寝てたから大丈夫だとは思うがな。

それでは、部屋に荷物を置いて、11時に広間に集合。」


今回の合宿は自由参加であって、参加人数は二校合わせても74人。顧問を入れて、78人だ。

親睦を兼ねての合宿になるので、自由に部屋割りが出来る。

俺が乗っていたバスでは、「隣に座ってる奴と、同じ部屋にする」と、環先生の言葉だった。

英さんと2人きりだ。嬉しいっ!


お兄ちゃんは誰と同じ部屋なのだろう。

気になるが、まあ良いや。


部屋に入ろうとすると、右隣は顧問の環先生と久住先生。左隣は副部長とC校の誰かだ。

荷物を置きベッドに横になったら、英さんが乗っかってくる。

思わず言っていた。

 「え…、もう?」

くすっと笑われては、言ってくる。

 「期待に応えてあげたいが、10分程で集合時間だ」

キスだけ、と言いながら、唇を重ね合わせる。

1ヶ月ぶりのキスだ。

少し経つと、唇は離れては耳元で声がする。

 「夏生君。続きは今夜だからね」

 「は、はい・・・・」


俺は英さんの背に腕を回し、抱きしめ返していた。

 「それなら、もう少し、このまま…」

うん、と声が聞こえ、英さんの俺を抱きしめてる腕の力は強くなった。

暫らくすると英さんは言ってくる。

 「そろそろ広間に行こう。遅れたら罰掃除かな…」

 「え、それは無いでしょ?」



広間に着くと、既にC校の方は全員揃っているみたいだ。

もしかして罰掃除有るのか?

俺は部長を見つけると、もしかしたら…、と自分の考えを言った。

なにしろ、去年は俺は罰掃除をさせられたのだから、無いとは言い切れない。

部長は、長短のリーダーを見つけては、メールとLINEで連絡を入れた。

内容はこれだ。

 『10時58分には広間に集合する様に。もしかしたら罰掃除あるかも?』

11時まで、後3分。急に廊下が騒がしくなった。

広間に、A校の残りが入って来た。

久住先生の声がした。

 「10時59分。A校、全員揃ったな」

その声に、環先生が舌打ちをした。

 「チッ…。一人でも遅れたら罰掃除させてやろうと思ってたのに…」


危ねぇ、本当に罰掃除させる気だったのか。


 「今回はバカをしない奴は居ないみたいだな。合同ともなると、必ずしでかす奴が出てくるのだがな…。たしか、去年は俺の上を飛んでは自分の部屋に戻った奴が居たが・・・、あいつは何処の学校だったのかな…?

まあ良い、丁度11時だ。

これから全体ミーティングをやる。11時半からは昼食で午後の練習は13時からだ。

C校は場所を知ってるのでA校の奴らを連れて行け。それでは、始める。」

そう言って、約20分間、全体ミーティングをした。

昼食は、広間に懐石料理が並べられた。

 「美味しいっ」


しかし、去年の合同の時、俺は環先生を超えたのか。だから罰掃除になったんだな。

覚えられてなくて良かったぁ…。


午後12時を過ぎると、誰かが立ち上がった。

 「C校の本田克之、今回の合宿の総リーダーです。A校のリーダーとサブは誰ですか?

この後、10分程話し合いの時間を持ちたいので、残ってください。

C校のサブも、忘れずに残るように」


英さんに声を掛けられた。

 「先に部屋に戻ってて」

 「え?」

 「俺は話し合いがあるから」

はい、と返事をして部屋に戻った。



少しばかり、ボーッとしていた。

 「ただいま」

 「お帰りなさい。英さんってサブなんですね」

 「今回の合宿のだよ」

 「それでも凄いよ」

 「12時半になると、一斉に皆が出るから。もう出るぞ」

 「え…、もう?」

 「ギュウギュウ詰めの中で着替えたいか?」

 「それは嫌だ」

用意してたので、すぐ外に出た。

合宿所を出て、坂を登る事10分弱でロッカーに着いた。

 「ロッカーは鍵が付いてるから、無くすなよ」

 「はい」



そして、13時になると、練習を開始する。

皆が一斉に1000mを5本走る。

その後、長距離は3000を10本、短距離は800を10本走る。

それからは、各々の分野に分かれての練習だ。


フィールドの状態は良いので、慣らしに3回ほど軽く飛んでみる。

うん、良いかも。


・・・・よし、飛ぶぞ。




練習が終わったのは16時過ぎだ。

既に、薄暗くなっている。

 

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