空白の部屋

オカルトクラブの中央の机に座っている否、君臨しているの間違いか。

とにかく目の前にいる人物に驚きを隠せなかった。

その人物は私を一瞥し、ニヤッと笑う。

部屋に充満する臭気が嫌いだ。

桃のようなラベンダーのような香り。

私はこの香りが嫌いだ。

この部屋の主は全て知っている癖に何も語らない。

機嫌がいいと3つだけ質問を許してくれるがその態度が気にくわない。

神様気取りの部屋の主、オカルトクラブ初代部長、螺子巻茅子(ねじまきかやこ)。

長い黒髪をかき上げて、私を真っ直ぐに彼女は見つめる。

「御機嫌よう、常盤さん。確か私の記憶が正しければ今回は20回目のループかしら?」

全て、お見通しな彼女が嫌い。

でもここに来なければまた誰かが私の三年間で死人が出ると2回目のループで教えてもらった。

教えてもらったことは全て偶数ループで3つずつ。以下の通りの事が分かった。


2回目、忠告のように

これからやってくる後輩に気をかけなさい。

自己紹介は間違えないようにね。

誰が犠牲になろうとも気に病んではいけないのよ。


それと最後に一つだけ、入学式が終わって自己紹介が終わったら速やかにここに来なさい。

犠牲は最小限に抑えられるわよ。


4回目は私から

さとりは私の幼馴染でループでは道化よ。

安心なさい、貴女は私よりループを止められる術を持っているわ。

千代田君といったかしら?彼の好意は無駄にしてもしなくても変わりはないわ。


6回目は機嫌が悪くて一つだけ

私が黒幕とでも言いたいの貴女は?


8回目は螺子巻先輩自身のこと

私が何故偶数回にしか干渉できないか?それは私の至らなさだから気にしなくても良くってよ。

卒業したらどうなるか?貴女の三年間が終わるまでは大学に通っているわよ。

まあ、最も貴女は私のことが嫌いでしょうし無理して尋ねなくてもいいわ。


なぜ全てを知っているか?

これだけは素直に答えることはできないわ。強いて言うなら私は貴女が思っているような神的存在ではないこと。あくまでループの監視役、必要以上に鑑賞は許されていないわ。


そして10回目のループで彼女は私が部室に来た時、飛び降り自殺をして犠牲となった。


12回目のループではいつも通りそこにいた。

嗚呼、ごめんなさいね。あの時は8回目で規約に触れてしまった代償だったわ。


何度も言う通り、このループは思惑で組まれた事であり誰が悪いとか黒幕とかはないの。

え?また規約に触れたんじゃなくて?

馬鹿ね、可愛い後輩のためなら命でも投げだす覚悟よ。


最後に幸せにおなりなさいね。


このループで暫く、彼女は偶数回になってもこなかった。

本当に世界から存在を消されたようだった。

先輩の香りや他人の神経を逆撫でする態度が嫌いだが後輩のために命まで投げ出す先輩なんてそうそう居ない。

でも好きにはなれない。何だか憎らしいが憎めない先輩なのである。

私が考え事をしている間に彼女は席を立ち、つかつかと目の前まで来て両手で私の顔を包み込む。

「随分、やつれた様ね。私がいない間に全て試したの?」

姉のような母のような微笑みに絆されそうになる。

身をよじり、一歩距離をとった。

「あら残念、貴女が思ってるほど私は悪い人ではないと思うのだけれど…。」

クスクスと目の前の魔女が笑う。

そうこの人は人心掌握に長けた魔女だ油断ならない。

「私を傀儡にしないでください。第一なんで貴女は記憶を持っていて偶数回にしか登場しないんですか?余計に怪しいでしょ。」

キッと睨むと彼女は戯けた仕草で一歩、私に近ずく。

「信用してくれないのね。寂しいわ。

じゃあ、一つだけ、解決のヒントをあげるわ。

貴女、自分が死んだループは体験している?」

私が死ぬ?

いやいや、私の三年間をループしているからこうなっているであって私が死んだら意味がないのでは?

「ふふふ、百面相ね。自分が死ぬなんて嫌な事は絶対にしないでしょうね。

固定概念を捨てなさい常盤さん。貴女の三年間を繰り返しているのではなくこの学園が単純にあらゆる可能性を秘めていると考えるのが妥当ではなくて?そうでないと毎回違う犠牲者が浮かばれないわ。」

そう、考えてみればそうだ。

私に関わりのある人が毎回私の目の前で死ぬ。

まるで私を生かそうとするかのように、じゃあこのループは…

「最後に助言として聞いて頂戴、1年後、死んでみなさい。そうすれば何かが変わるかもしれないから。嗚呼、さとりには今回のループでは会えないわよ。何せ彼は抑止力だから、後、心配しなくても貴女にちゃんと未来はあるわ。

それでは、これは受理しておくわね。」

入部届けをヒラヒラとハンカチのように振りながら彼女は私に背を向けた。

もう彼女には要はない、私もそそくさとオカルトクラブの重たいドアを開いて出て行った。


そうして1年後、私は彼女の助言通り死亡する。


TO BE continue?

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