空の箱庭

潮音

空白の席

 私がループに気が付いたのは3回目の高校卒業式からだ。

二回目で違和感を感じ、三回目でやっとこの世界が私の三年間がループされていると気が付いた。

4回目でオカルトクラブの後輩、千代田君のラブレターを見つけた。

確か、その時はループのことで頭がいっぱいで断ったんだっけ?

付き合った時間枠もあった気がするが例外なく4月が始まると私はまた、高校生として真新しい制服に袖を通す。


 そして例外なくオカルトクラブの勧誘に合い、一二三先輩否、一二三さんと呼んだほうが正しいか。

彼はループしているけど役割が毎回違う、最初は一つ上の先輩。

次にループした時は保健室の先生。

三回目は私の従兄。

どれもこれも共通して言えることは彼は絶対に私より先に生まれて私の周りに必ずいることだ。

今回のループはどうなることやら、諦め半分で自分のクラス、1-Aの扉を開く。

既視感のあるメンバー。

一字一句変わらない自己紹介、5回目では自暴自棄になりそうになって言葉に詰まったら隣の席の奈津美は声をかけてくれなくて親友にはなれなかった。

深呼吸して私の番を待つ、その間にこのループが誰のせいなのかを考察する。

五回目の三年間で私が原因かと考えてみた。

私がこの三年間に未練があってもしくは事実は小説より奇なりというくらいだから私は何か事故に遭って脳だけで三年間を繰り返しているのだろうかと仮説を立てた。

だが前にも考えた通りそれでは一二三さんの毎回違う役割で現れるということに説明がつかない。

仮に私の記憶があやふやで都合のいいように作り変えているだけだと考えてもなぜ身内にまでなるのかいささか疑問である。

四回目では失礼だが後輩の千代田君が恋心をかなえるためにこのループを何らかの形で形成しているのではと下種の勘繰りをしてしまった。

だがその仮説は5回目であっけなく潰える。

彼のラブレターを受け取り、告白を聞き、オーケーしたとしても4月1日にはまた高校生に元通りなのである。

五回目で一二三さんにあなたが現況かと聞いたが埒が明かなかった。

なんでも彼が言うには前回の役割はわかっていてもループについての記憶が一切ないのだという。

嘘をついている可能性も疑って実際に彼の家まで尋ねたり物的証拠を掴むためにいろいろ努力したがすべて水の泡となった。

そうこう考えているうちに私の番が回ってきたようだ。

「南中からきました。

常盤恵美です、よろしくお願いします。」

そして、この後、オカルトクラブの部室まで行く入部届を持って。

自己紹介が終わり部活見学に行く。


 長い長い廊下を一人で歩く、目指すは突き当りの不気味な部室。

扉の前まで来たが普通教室より豪奢な扉が開けるのに戸惑う。

まさかとは思うが私がこの部活に参加すること自体が間違いだったのではと思う時がある。

だが入らなかったら千代田君が何らかの形で犠牲になってしまう。

それは7回目のループで経験済みだ。

それだけはごめんだと誰かが犠牲になる未来ではない筈だ。

漫画やアニメならまだしも千代田君やほかにもたくさんの人が私の選択間違えで犠牲となっているのにいまだにループから抜け出せない。

考え事が過ぎたようだ。

勢いよく豪奢な扉を開けると薄暗い部屋にふわりむせ返るような甘い香りが漂ってくる。

嗚呼、この香、まただ。

あの人がこのループにいる。

私の目の前には四角いテーブルにシルクのクロスと水晶玉が鎮座している。

後、数分でこの部屋の主が現れるだろう。


TO BE CONTINUE

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