13話

 北欧の病院では大騒ぎが起こっていた。


「先生!クララの脳波が活発に」


「凄い信じられない」


 目を覚まさなかった眠り姫が、遂に反応を示したのだった。



 その眠り姫は、その時未だ自分の意識の中に居て、ある声が囁いていた、


゛地球の裏側はどうだった?゛


「誰ですか?」


゛ボクはキミが絵本で読んだ地球だよ゛


「地球さん、一度会いたかった」


゛ボクはキミを地球の裏側に送った゛


「そうだったの!」


゛ボクのした事はキミを不幸にした?゛


「ううん、大事な経験をしたわ」


゛それは何より、じゃあキミは大丈夫だ゛


「なんの事?」


゛もうお別れだ、思い残す事無いかい?゛


「お願い、最後にチャムと会わせて」


 フッ目の前に元居た川辺の光景が映る、


「チャム、生きるのよ」


チャムは何も語らない彼の手を握って、


「クルンがきっと戻ってくるから」


 そう呟いて手を話すと、スッと彼が目前から消える。


と同時に、さっきの声がして、


゛じゃあ!元気でね゛


と闇の中に声が響いた。


「えっ……」



 瞼の裏がほんのりピンクに明るくなってから、軽かった身体が急にズシリと重みを感じるようになる。


「ん、んん」


「お姉が目を開けたよ!」


 マーヤが皆を呼び集める。


目の前が見覚えのある顔で一杯になった。


「クララ」


「ママ?」


「良かった」


「パパ!」


 クララは2ヶ月ぶりのパパに抱き付こうとしたが、身体が動かない。


「私、未だ戻ってない?」


「始めましてドクターだよ、会えて嬉しいけど動くのは未だ無理」


 それを受けてママが言う。


「一年以上寝てたんだから」


「え、一年?」


「徐々にリハビリテーションして、復帰を目指せば大丈夫」


「やったーまたお姉と遊べるのね」


 そこに皆の笑顔があった。それを見るなりクララは生きられる事の感動を噛み締めるが、祝福する人の中には居て欲しい二人の姿は無く、ただ二人に感謝するのみだった。

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