7話

 クララの悪寒は当たっていた、


風を切るような音が空で響いたと思った瞬間後ろを振り替えると、


ドズ―――ン!


 地響きと細かい閃光が起こり、空に木々の破片が舞い上がる、更に。


パラパラパラ……


と細かい何かが空から舞い降りたかと思った途端に、


ド・ド・ド・ド・ドーン!


 さっき通った轍の直ぐ後ろを横切るように連続で轟音と猛火が走り抜ける、


「キャーッツ!」


 耳を塞いで突然沸いた烈火から本能的に遠ざかろうと逃げ惑うクララ、その後も情け容赦のない爆音と、烈火の強襲は止むことは無い。


「人がここに居るのに!」


 その事を知ってか知らずか?攻撃は際限なく続いて、彼女は兎に角逃げ回った……



 誰も居ないICUの前の無機質な通路で、姉の安否を案じて母に摺り寄る娘。


「パパはまだ?」


「パパは今北海から向かってる」


「ママ、どうなるの」


「クララは絶対帰ってくるわ」


「お姉」


 そこには二人の不安を慰めるモノは何も無く、二本目の希望の灯火が消えようとしていた。



 二人が病院で眠れぬ夜を明かした翌日曜もICUに変化は無く、その夕方漸く父エリックが病院入りした。その時点で娘の状況は膠着状態で、家族は持久戦を余儀なくされる。


 マーヤは疲れてクララの病室で仮眠をとっている、ハンナを気遣ってエリックが、


「君も一旦休んだ方がいい、全然寝てないだろ?」


「眠れないの、寝てる間に居なくなってしまいそうで」


「何て事を!彼女は強いしっかりした娘だ、私達が信じてあげなくてどうする」


「私、二回も絶望してしまった!ああ怖いエリック」


「済まなかった君にずっと重荷を背負わせて、辛かっただろう?」


 ハンナは、堰を切ったようにエリックの胸で泣いた。彼は震える小柄な彼女を優しく抱いて、娘の命の尊さを改めて噛み締めると、少しだけその周りが温かくなった。

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