5話

 数日が経ったある週末、学校が休みのマーヤは午前にクララの病室に母とやって来て、母が部屋の整理をする間、


「お姉の大好きな絵本を読んであげるね」


 姉の部屋から持ってきた、お気に入りの絵本を読み出した。



“地球のお話”



大きな身体の地球は悩んでいました



大きくてゴメンね



彼の上に生きる人達は



僕らは幸せに暮らせてるのに、どうして?



僕の裏側で起きてる事は分からないでしょう



何が在るのか行ってみたいな遠い国



僕の中を通って行くといい



これなら広い世界も一つになれるね



そうなるとうれしいよ



みんなありがとう



君が僕らを護ってくれるから生きていける



こちらこそありがとう



ありがとう



 これだけのシンプルな物語。


 小さい頃二人一緒に読んで貰った、特にクララは何度も読み返す程お気に入りだった。


「喜んでくれたかな」


 読み終わって妹は、習慣になっていた地球儀の向きを確かめると、今日も東南アジアを向いたがこの事は誰にも言わずに少女は自分の中に秘密を作るのを楽しんでいた。


「その絵本、クララが小さい頃よく読んであげたわね」


 ママがロッカーを整理しながら呟いた。


「お姉はどうしてこの話が好きなのかな?」


「大きくても繊細な、その地球みたいな優しい性格に憧れたんじゃないかな」


「何かパパみたいだね」


「そう言えば、そうだね」


ピ、ピ、ピ……


 二人の会話を裂くように姉の状態を測る装置が鳴り出した。


「何?」


 マーヤが敏感に反応する、ハンナは顔を険しくして娘に、


「先生を呼んでくるから、クララに付いていて!」


母は病室を飛び出していった。


 その時地球儀が一回転したのを、マーヤも見落とした。

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