冴えない隣人の語りかた

半座

※これはただの自己満です

 3月19日――今日は『冴えない彼女の育てかた Girls Side2』の発売日である。

 各店舗、それぞれでとても豪華な特典が付いてくるのもまた魅力であり、中には複数買いする者も少なくない。

 そして、この日は生憎の雨にも関わらず、朝からテンションの高い男女が秋葉原に訪れていた……


「「秋葉原ーーー!!」」


 安芸倫也と相楽真由の二人だ。

 二人はホームに降り立つと同時に声を高らかにし、真由の方は片方の拳を突き上げ、倫也は両の拳をグッと握り締めてガッツポーズを取っていた。


「さて、それじゃあ……まずはとらからよね?」

「いやいや、ここは奥から攻めていく形でアニメイトからが良いと思うんだ」

「特典の小冊子もあるとらを後回しなんて、何考えてるのか理解に苦しむんだけど」

「連動特典クリアファイルのことを考えたら、早々に無くなることはないと予想すべきでしょ!」


 到着早々の息ピッタリは何処へやらで、お互いに目当てとする特典の違いに熱くなり語り始める。

 最終的に全て集めるのだから、ここで言い争ってる時間こそ無駄であるとは気付かずに……


「じゃあ、相楽さんがとらへ、俺がアニメイトへ……これならお互いに損することはないでしょ?」

「そうね、あんたの分もって思うとあれだけど……ここは一時休戦ね」


 利害の一致から二手に別れて行動することにした倫也と真由。

 実際、そこまで万全な動きをするまでもなく購入は可能なのだが、お互いに目当てとする作品への思い入れの強さから譲れないものがあった。


 二手に別れて行動すること、一時間後……

 二人はいつものように喫茶店で買ったばかりの本を開き、どちらからともなく読み始める。


「深崎先生のイラストすっごいかわいい!!武者サブ先生のイラストも大好きだけど、こっちも大好き!」

「相変わらず地の文も面白い!それに、七巻からの蟠りが多少なりとも解決して良かったなぁ、二人ともぉ……」


 イラストレーターの描くその素晴らしいイラストに目を輝かせ、著者の創るストーリーには一喜一憂し、二人で夢中になってページを捲り、時には息を飲んだ。


 全てを読み終えた二人は、どちらとも微かに瞳を潤ませてはいたが、しかしながらその表情には悲しみの色はなく、何処かスッキリしたものだった。


「皆、本当に良かった。皆が、何かに向かってる……前半の頃とは違って、主人公一人に振り回されてる訳じゃない……それが本当に分かった」

「あたしもそれは感じた。キャラ達が成長したからなのかも知れないけど、それに適したイラストが、本当に映えてて……皆かわいかった!」


 タイトル的にも番外編と思えるこの巻は、それでいて殆ど本編と言っても過言ではない出来であり、内容だった。


 一つだけ、本当に一つだけ心残りがあるとすれば……一度も名前を語られることのなかった、とあるサークルのイラストレーターのことだけである……

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