第2話〈救いなんてない〉

1時間目の終了を告げるチャイムが鳴った

「お、もう終わりか。それじゃあ号令よろしく」

「起立、気を付け、礼」

「「「ありがとうございました!!」」」

挨拶をして先生が教室を出ると休み時間特有の喧騒が教室に溢れる

僕が何かから隠れるように本を取り出していると前の方から体の大きい男子が近づいて来た

「おい優月、ちょっと来いよ。」


何で毎回僕なんだろう


「…おい、聞いてんのかよ!」


僕が何したっていうんだろう


「無視してんじゃねぇぞ!」

制服の襟首を掴まれて席を立たされ、無理やり教室から連れ出される

本は落ちてクラスメイトの声が段々遠ざかって行く中誰かが言った

「かわいそう…でも苛められたくなりたくないし…」


教室から少し離れた下駄箱まで引きずられて壁に叩きつけられる

「お前さっき俺の事無視したよな?」

頭では無駄だと分かっていても、脊髄反射で言い訳をしてしまう

「いや…ちょっと考え事してて…」

「はぁ?ふざけてんじゃねぇぞ!」

柳田と言うその年不相応の体格を持つ男子は声を荒げて、躊躇いも無く僕の腹を殴る。

大して運動もしてない僕にはとても痛い、というか痛いどころじゃ無く、息が出来ない。

そうして地面に伏せて悶える僕を見て柳田は薄ら笑いを浮かべていつもこう言う

「調子乗ってんじゃねぇぞ!殺すぞ!」

柳田は唾を吐いて何も無かったかのように教室に戻って行く。

僕は少し時間が経ってから出来るだけ普通に見える様に息を整えてから教室に戻った。

教室に入ると色んな視線が浴びせられ、嘲笑の声や哀れみの声も聞こえる。

もう慣れたそれを気にせず席に戻り、拾い上げた本を開く。

これが僕の日常だった。

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