人形の彼女と刻み手の僕
七瀬 碧月
第1話〈いつも通りの朝〉
もう何もかも投げ捨てたい、生まれて何て来なければよかった、そんなことを考えたことはありますか?あるいは…〈死にたい〉そう思ったことは?
「ほら起きなさい!早く起きないと学校遅刻するよ!」
頭の上まで被っていた布団を無理やり剥がされて起きる、いつもそう
「うん…今起きるから…」
いつも通りの小言を言われて学校の準備をする
準備が完全に終わって家を出たところで忘れ物をしたことに気が付いて急いで部屋に戻る
「どうしたの?忘れ物でもした?早くしないと遅刻するよ!」
「分かってる!」
机の上から1冊の文庫本を取り階段を下りながら制服のポケットにしまう
玄関を出る時に壁の時計を確認したが、まだ歩いて間に合う時間だった。
良かった、ひとまず胸を撫で下ろして歩きながらポケットに入れた本を取り出す
なんてことは無い普通のライトノベルだ、ただの高校生がある日事件に巻き込まれて特別な能力に目覚めて同じく能力が使える仲間を増やしながら事件の真相を探すタイプのよくある冒険物だ。
僕はある理由から1人で居る事が多い、だからそういう時に読むための本を買いに結構な頻度で本屋に行く。
事前に調べたりなどはせず、表紙とタイトル、そして裏のあらすじを見て良さそうな物を買う、今読んでいるこれは少し例外で、本屋の棚の端の方にひっそりと売っていた。
それを見た時、何故か親近感を覚えた。表紙やタイトルを見る事もせずに会計をする。
「なんで買ったんだろう…」
学校に着くまでの15分程の間ずっと読んでいた、学校に着いたときには主人公が能力に目覚めて新しい仲間と出会うシーンだった。
門をくぐり下駄箱で靴を履き替え自分の教室に向かいながら、さっき読んでいた本を思い出した。
「僕にも能力があったらいいのになぁ…」
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