第6話 西暦3000年~ 最果てを目指して
無人輸送補給船N774活動記録
予定時刻通りに本機は深宇宙探査機アビスアタッカーとランデブーに成功。
補給物資を受け渡し、次回に運搬する物資の発注を受ける。
特記事項無し。
本日もまた、いつものように古びた探査機への補給任務を完了する。
私より三桁を越える世紀も前に作られた探査機。人類が本格的に宇宙に移住した黎明期、きたるべき恒星間移民のために作られたデータ収集用宇宙船だ。
本星から定期的に補給船を送り、宇宙の果てを目指して航行するのが目的で、何かしら技術的ブレイクスルーがあったときには大幅なアップデートがなされる。
だがそれも過去の話。現在の超光速航法、いわゆるワープの実用化によって彼を追い抜く船が建造できるようになり、宇宙の果てが観測されたのも結構前だったと記録されている。
度重なるバージョンアップで超高度自立思考型AIを搭載した彼に一度訪ねたことがある。
とっくに別の誰かが目的を達成したこの任務を続けることに意味はあるのかと。
彼は答えた。
「確かに宇宙の果ての観測という目的は別の探査機が達成しただろう。だがそのための手段は一つではない。かつて人間は山に上るとき、様々な条件をつけてその条件で初めて達成したことを誇ったという。私も今、この条件で宇宙の果てを探査するという、私にしかできぬ事をやっているのだ。」
彼の言葉を負け惜しみと感じるのは私の方が彼よりも高度なAIを搭載しているからだろうか、それとも私がこの任務に飽いているからなのか。
・・・思考回路にリミッターを設定。これで任務以外の余計なことに煩わされることもないだろう。
こういう点はAIで良かったと思う。
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