第5話 アイドル達の自己紹介
「それじゃあ、そろそろ自己紹介タイムと行こうか」
「自己紹介タイム?」
里がスケッチブックにペンを走らせ始めてからそう待つこともなく、校長先生が石膏ボーイズの前に出てそんなことを言ってきた。
「校長先生、もう一歩前に行って」
里に言われて一歩前に出る校長先生。視線を遮る物が無くなって里は再びスケッチに戻った。
校長先生はこほんと一つ咳払いをして、話を続けた。
「君達は石膏ボーイズのことをよく知らないだろう。だからここで紹介しようと思う」
「石膏ボーイズ様のことを? はい、知りたいです」
「被写体のことを知ることは大事」
則美が犬のように目を輝かせ、里がスケッチブックを置いて顔を上げた。
茉莉香としては後で文句を言われない程度に覚えておこうと思っただけだった。
石膏像の一体がまず名乗りを上げた。
「それではまずリーダーの僕から自己紹介しよう」
「リーダー?」
「石膏ボーイズにはリーダーがいたんですね」
「石膏像にはリーダーがいる。メモメモ」
微妙そうな反応に彼のテンションは少し落ちたようだ。
他の石膏像達がはやし立てる。
「正直に言っていいよ。リーダーに見えないって」
「ジョルジョってリーダーのオーラ無いよね」
「話下手だし、地味だよね」
「お前ら……」
「まあまあ」
茉莉香にとってはリーダーがいるということ自体初耳だったわけだし、則美も気にしていないようだった。
「みなさん、素敵すぎるから埋もれてしまうんですよ」
「埋もれた美を発掘するのも美術家の使命」
則美や里の言葉はあまりフォローになってないと思うが。
校長先生は話の続きを促した。
「それじゃあ、紹介の続きをしてくれるかな?」
「「「「いいともーーー」」」」
何だかノリの良い人(?)達だ。
ジョルジョさんは気を取り直して自己紹介を続けた。
しっかり聞いておかないと忘れそうなので茉莉香は気を引き締めることにした。
「僕の名前はジョルジョ。眉目秀麗冷静沈着聖人にしてドラゴンスレイヤーでこのグループのリーダーさ」
「お前いくつ属性を連ねるんだよ。俺はマルス。愛に生き、戦いに死す。ちょっとやんちゃな神様さ」
「神様気取りかよ。僕はヘルメス。ビジネスから音楽ギャンブルまで有り余る才能に溺れそうなのが悩みの天才さ」
「天才とか(笑)。僕はメディチ。顔も育ちもパーフェクト。元祖トップオブトップセレブリティの大金持ちさ」
「金持ちなら焼肉ぐらい奢ってくれよ。そして、僕達四人を合わせて」
「「「「石膏ボーイズ!!!!」」」」
「なのさ」
「おおーー」
則美が感動に手をパチパチと叩き、里が書き終えたメモに鼻息を鳴らす。
校長先生は大人びた落ち着いた笑みで見つめている。
石膏像達はドヤ顔で並んでいる。
何だか知らないが個性的な人達だ。
ともあれこうした人達の面倒を茉莉香は見ることになったのだった。
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