天草トコロ 〜アマクサトコロ〜
プロジェクトルームで近々行われるお仕事の台本を読んでいると、八代プロジェクトに所属しているアイドルの中では1番のお兄さんに当たる草履川さんがやって来ました。
「川さん、おはようございます」
「おはよう、トコロちゃん。台本読みの最中みたいだけど、少し時間を貰っても良いかな?」
「はい、良いですよ」
先輩の誘いは断れないという気持ちも少なからずありましたが、この事務所の中で一番大好きな先輩である川さんとお話しをしたくて、したくて堪らなかった私は二つ返事でそう言いました。
「トコロちゃんって確か、ゼリーが好きって言っていたよね?」
「はい、食べるのも作るのも大好きです」
「記憶違いじゃなくて良かった」
川さんはそう言うと、持っていた紙袋から包装紙が無くても十分高価なものだとわかる大きすぎず小さすぎないサイズの箱を取り出しました。
「この中には貰い物のゼリーが入っているのだけど、美味しかったからトコロちゃんにあげるよ」
「えっと。ゼリーを頂けるのは嬉しいですけど、これって川さんが貰ったゼリーですよね?」
「実は昔からゼリーの食感があまり好きではなくてね。でも、これはゼリーが苦手な僕でも美味しいと思って食べることが出来たからきっとゼリーが大好きなトコロちゃんならもっと美味しく感じると思うよ」
「でも」
「僕の家にあっても食べきる前に腐ってしまいそうだから、このゼリーをくれた相手には申し訳ないと思っているけれど引き取ってくれないかな?」
川さんが私に対してそこまで必死にお願いをするのはこれが最初で最後だろうと感じたので私は咄嗟に
「わかりました。頂戴します」
そう言って高級そうな箱に入ったゼリーを受け取りました。
寝る前今日一日のご褒美として川さんから頂いたそのゼリーを普段は使う事のない特注のゼリー用スプーンで食べてみると川さんの言っていた通りとても美味しいゼリーでした。
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