御影伸樹 〜ミカゲノブキ〜

4月22日


 プロデューサーの仕事としてアイドルの子たちの仕事を見守っていると、無茶ぶりの瞬間を目撃することが多々ある。無茶ぶりは大体の場合、バラエティ番組の司会を務めている芸人がゲストとして登場した後輩の芸人や、弄られキャラが定着している芸人にしているが、アイドルのプロデューサーとしてアイドルの仕事を見守っている僕は芸人から芸人に対しての無茶ぶりよりも芸人からアイドルに対する無茶ぶりを目撃することほとんどだった。


 中でも、僕の担当アイドルである御影伸樹さんはある特技が理由で無茶ぶりの標的にされることが多い。


「確か、伸樹くんの特技って少林寺拳法だったよね?」


 スポーツバラエティ番組に出演していた伸樹さんは休憩時間中にデスティニー田中という芸人さんにそう尋ねられていた。


「最近は嬉しい事にたくさんのお仕事を貰っているので道場には行けていないですが、去年までは週に一度は必ず道場に行っていましたよ」


「じゃあ、某映画みたいなサッカーやってみてくれない?」


 カメラは回っていないが、今いる場所がサッカーコートであることを良い事にデスティニー田中さんは本気で無茶ぶりを仕掛けて来た。


「知らない人によく勘違いされることなのですが、僕の習っている少林寺拳法と中国だったかの少林拳は同じ『少林』であっても中身は全くの別物です。でも、折角の無茶ぶりですからやってみましょうか? ただし、少林寺拳法とは全くの無関係で少林拳風のオリジナルの形で」


 無茶ぶりを受けた伸樹さんは、デスティニー田中さんの少林寺拳法に対しての誤った知識を訂正した上でいつものように無茶ぶりに乗っかった。


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