南川真司 〜ミナミカワシンジ〜

4月23日


「真司さん、少し時間大丈夫?」


「構いませんけど、どうかしましたか?」


 僕は南川真司さんに10か月後のスケジュールを見せた。


「ダブルブッキングですか」


 常日頃からこのような事が起きないように気をつけてスケジュールを立てているのだが、恥ずかしい話、僕は数年に一度このようなミスを犯してしまっている。


「不幸中の幸いでまだスケジュールの調整が出来るけれど、大きい規模での仕事と小さな規模の仕事のどちらを優先する? 選択は真司さんに任せるよ」


「じゃあ、小さな規模の会場で」


 真司さんはそう即答した。


「いつもなら大きな規模の仕事を選びますが、この選択肢なら迷わずにこっちを選びますよ」


 真司さんがそう言った事で、僕は真司さんが即答した理由とダブルブッキングを犯してしまった理由がわかった。


 真司さんが即答した理由は、小さな規模の会場は真司さんにとってアイドルとしてはじまりの場所であるから。ダブルブッキングを犯してしまった理由はこの会場の仕事は真司さんが最優先していることを知っている僕がスケジュールの確認もせずに無条件で引き受けてしまっていたからだった。


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