古株真守 〜フルカブマモル〜

4月15日


「ねぇ、プロデューサー」


 デパートの特設ステージでのミニライブを終えたばかりの控室で帰り支度をしていた古株真守くんは荷物の中に入っていた何かを見つけると、僕を呼んだ。


「どうしたの?」


「帰りにゲームセンターに行きたいのだけれど」


 真守くんは自分のカバンからつい先程見つけたのだと思われる男児用データカードゲームのカードホルダーを僕にチラリと見せてゲームセンターに行きたい気持ちを僕に伝えて来た。


「連れて行ってあげたいけど……」


「あの」


 僕が言葉に詰まっていると、今日は僕の仕事に付き添ってもらっていた志葉君が申し訳なさそうに会話に加わった。


「姫路さんの仕事は僕が引き継がせてもらいますので、姫路さんは真守くんをゲームセンターに連れて行ってあげて下さい」


「そう? じゃあ、お言葉に甘えて少しの間だけ志葉君にお願いするね。何か困ったことがあったら遠慮せずに電話してきてくれて良いからね」


「はい、わかりました」


「志葉君、ありがとうね。真守くん、そういう事だからゲームセンターに寄って行こうか」


「志葉さん、僕のわがままを聞いてくれてありがとうございます」


 僕も志葉君にもう一度感謝の気持ちを伝えて、真守くんとゲームセンターへ向かった。

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