新田永遠 〜ニッタトワ〜



4月8日


「先生!」


 新田永遠くんは僕の顔を見てそう呼んだ。そして、間違いに気付いた永遠くんはまだ桜の季節だというのに顔を紅葉のように赤く染め上げた。


「プロデューサー!」


 永遠くんは顔を紅く染めたまま、数秒前の出来事など無かったかのように僕を呼び直した。


「どうしたの?」


 笑いをこらえてそう言ったつもりでいたのだが、演技レッスンを受けていない僕の演技力では永遠くんを騙しきることは出来なかったようで、永遠くんは恥じらいで染めていた赤色を怒りの赤色で塗りつぶしていた。


「もうっ」


「永遠くん!」


 何か用事があったはずの永遠くんは怒りの赤色で塗りつぶした頬をぷくりと膨らませてプロジェクトルームから走って出て行ってしまった。そしてその数分後、僕の携帯電話に永遠くんから『明日のスケジュールを教えてください』とメールが送られてきた。

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