水原響 〜ミズハラキョウ〜
「申し訳ありません。水原さん」
プロデューサーは事務所で僕と会う度にそう言って頭を下げてくる。
「気にしないで下さい。仕方のない事ですから」
11月末に街中でプロデューサーにスカウトされ、12月1日付で正式に和水プロダクション真矢プロジェクトのアイドルになった僕は事務所に所属してから僅か7日目という速さで歌の収録をしたが、今回のクリスマスライブには裏方としてしか参加できないと告げられた。
「何度も交渉はしているのですが」
「大丈夫ですよ。裏方だとしてもライブを支えられてはいますから」
「水原さん、私はまだ諦めていないので」
プロデューサーは引いてしまうほどの目力でそう言うと自分の仕事へ戻って行った。
「熱いね。凄く熱い。北海道では例年以上に雪が積もっているほど寒いというのに」
「あ、あの」
「あぁ、ごめん。ちょ~っと話が聞こえたものだからつい聞き入っちゃって。俺、雪山岳。よろしく」
「水原響と言います」
「うん、知ってる。2週間くらい前に入った人でしょ?」
「はい」
「それで、プロデューサーはクリスマスライブに出そうとしている。でも、難しいってなっているみたいだけど、水原君が超簡単にクリスマスライブに出る方法が1つだけあるけど聞く?」
僕は興味半分、期待半分で頷いた。
「俺とユニットを組む。曲は俺のソロ曲をパート分けすれば出来るけどそれで良いよね?」
「それって、簡単な事では」
「別にサプライズって言えば何とかなる。心配なのは歌だけど、噂通りなら1週間もあれば十分でしょ?」
「出来なくはないと思います」
「ん。じゃあ決まり。プロデューサーの喜ぶ顔が目に浮かぶ~」
岳さんは嬉しそうに笑いながら僕の手を取ってプロデューサーを探しに歩いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます