菊池拓也 〜キクチタクヤ〜

 今日はオフであるが、私は事務所を訪れた。


 先にも述べた通り、今日はオフ。つまり仕事は休みだが、それは私個人のスケジュールであり、同じ事務所やプロジェクトのアイドルやプロデューサーたちにとってはなんて事のない平日で、そろそろ疲れが溜まってくる木曜日の朝なのだった。


「さて」


 事務所には来たが、私は所属している真矢プロジェクトのプロジェクトルームには行かず、1階にある喫茶店に行き、つい2、3ヶ月前までは現役で使われていた教科書とノートを開いた。


 主にクラシック音楽が流れている喫茶店というのは集中するのに丁度良い。つい最近までは教師という仕事をしていたので喫茶店に行く機会はなかったが、学生の頃に通っていた店とは違うが懐かしい雰囲気があり事務所にあるこの喫茶店は私にとって心地の良い場所となっていた。


 そんな心地の良さを感じながら教科書とノートを相手ににらめっこをしていると、時計の針はいつの間にか12時を既に過ぎて1時になろうとしていた。


 そんな時間になっていたと知ると私の腹の虫はここぞとばかりに騒ぎ出した。


 私は腹の虫がこれ以上騒ぎ出す前に学生時代に喫茶店でよく頼んでいたカレーライスを注文した。


 学生時代に食べていたものとは全くの別物ではあったが、この喫茶店の雰囲気同様に懐かしさを感じた。

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