金井一将 〜カナイカズマサ〜
レッスンが終わり、家に帰ると川野プロジェクトのアイドルである遠藤花菜がいた。
従妹であり、俺の勧めによって和水プロダクションのオーディションを受けてアイドルになった花菜が俺の家に遊びに来ることは決して珍しい事ではないが、平日のこの日に花菜が遊びに来るのは珍しかった。
「母さん、今日は花菜どうしたの?」
「今日は帰りが遅くなったから泊めて欲しいって」
花菜と俺の家では事務所との距離が僅かにしか変わらないはずなのだが、母さんは何かを察したのか、それ以上の理由を花菜から聞いてはいないようだった。
「花菜、何かあったのか?」
そう聞いてから俺は後悔した。小さな頃から一緒に遊んでいて他人よりはお互いの事を知っているとはいえ、花菜も年頃の女の子である訳で、聞かれたくないことの1つや2つあるはずだった。
「悪い。嫌なら言わなくていい」
しかし、花菜は話してくれた。
話を聞いた限りでは、花菜は今朝、母親と仕事に関することで喧嘩をしたのだという。
同業者という立場から仲直りの為に手助けをしてあげたかったが、その仕事というのが女子中高生向けの化粧品のCM出演と俺が口を出せるような内容では無かったため、俺の出番は一切無いままこの喧嘩は川野プロジェクトのプロデューサーが波風が立つ前に良い方向で納めた。
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