生田充 〜イクタミツル〜

「お! ミツルじゃ~ん」


「やめろ。くっつくな。暑苦しい」


「今日は寒いから良くな~い?」


 こいつの名前は真上・アンジェリーノ。俺の幼馴染で、俺と同じ18歳のアイドルで、俺の知る限り一番の馬鹿だ。良い意味でも悪い意味でも。


「ンジェ、今日は仕事じゃないだろ?」


「それはミツルもでしょ」


 確かに仕事が休みだから今日はレッスンルームで自主レッスンをしていた。ンジェが来た理由はわからないが。ちなみに、ンジェとは『アン』とか『ジェリー』とか『リーノ』と言った多くの呼び名があるこいつのニックネームの1つで、呼ぶきっかけになったのはンジェ曰く「しりとりで『ん』が付いても続けられるから~」という馬鹿らしい理由だった気がする。


「で、何? 邪魔しに来たのか?」


「そ~う。じゃな~い」


「どっちだよ」


 とツッコミを入れてみたが、きっと邪魔しに来たのだろう。まだ俺の身体から離れないし。


「そ~だ~。ミツル、ユニット組もうよ」


「唐突過ぎるだろ」


「ノー、ノー、来たリユーを思い出しただけ」


 理由。そんなものを利用してンジェが動くことが出来たのか。


「プロデューサーがユニット組んでも良~よって言ってたから」


「別に俺は構わないけど」


 安心は出来ないけどンジェと一緒なのは本人に直接伝えたくはないが嬉しい。


「決っまり~ユニット名と作詞と作曲と振り付けはまっかせて~」


 目の前で狂ったように歓喜の舞を舞うンジェに俺はただ一言


「不安だ」


 そう思っていた。

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