天野大青 〜アマノタイセイ〜
土曜日という曜日はほんの少し前までただの休みというイメージしかなかったが、アイドルという職に就いてからはそのイメージがすっかり失われてしまい、同業者が一番働いている曜日というイメージが私の中で定着した。
「そんな日に私は一体何をしているのだろうな」
事務所近くにある小料理屋、20歳の誕生日にプロデューサーが連れて来てくれた元事務所職員の始めたこの店に私は1人で訪れていた。
「お仕事、お休みですか?」
「まぁ、アイドルとして休みがあるのは致命的ですが。残念な事に休みです」
それは事務所で働いていた女将さんも分かっているだろうが、女将さんは話を終わらせはしなかった。
「たまたま休みという訳じゃないでしょう?」
「誤解される前に言っておきますが、午前中は仕事でしたよ。午後からは平日に仕事を入れることの出来ない学生組が忙しくなるのでこの時間は大人組の仕事が減っているだけですから」
「子供を言い訳に使うのは感心しませんね」
「子供とは言っても同業者。ライバルですから」
「物は言いようですね」
女将はそう言うとそっと御通しを出してくれた。
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